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2012年11月22日木曜日

第26回日本臨床内科医学会(徳島県)教育講演5 骨粗鬆症診療の進歩

第26回日本臨床内科医学会(徳島県)教育講演5 骨粗鬆症診療の進歩

高齢者で急速に骨粗しょう症増加が続いており、70歳以上の女性の半分、80歳代の男性の4分の1を占めるようになった。
要介護原因の1位脳卒中、2位認知症、3位は骨折であり、健康寿命をさまたげ、さまざまな疾患の合併により死亡リスクも高めている。
骨粗しょう症とは骨密度と骨質できまる骨強度が低下した状態のことである。
骨質とは構造特性と材質特性できまる。構造特性の劣化とは、板状が柱状に変化、筋交いの減少、皮質骨の海綿化などであり、材質特性の劣化とは、コラーゲンの生理的架橋であるピリジノリン架橋が糖尿病ではAGE架橋のような非生理的で強度をもたない架橋に変化、骨回転の低下により骨全体の石灰化度が進み均質化することなどである。このような骨質の劣化と骨密度の低下により骨粗しょう症を発症する。
頭の高さ以下から落ちて(転倒などで)骨折してしまうのは弱い骨といえる。転倒しやすさも骨折の大きなリスクである。神経・筋疾患による姿勢の制御能力の低下、皮下組織の減少による緩衝作用の低下も影響する。
骨密度によって骨粗しょう症と診断できない人で骨折リスク高い人は多い。そこで骨密度だけによらない骨折リスクを拾い上げるFRAX(Fracture assessment tool)が開発された。しかしFRAXによる評価を超えて2型糖尿病患者では一般人より骨密度高いが1.7倍骨折を起こしやすい。これはAGE(Advanced glicated endproduct)架橋の増加により骨がもろくなっているためである。血中のesRAGE(endogenous secretory receptor for AGE) to pentosidine ratioを測定することにより、骨折リスクを評価することができる。
ステロイドによる骨折は骨形成の低下による。ステロイド5mg以上を3ヶ月以上飲んでいる人すべてにビスフォスフォネートを投与することが望ましい。テリパラチドによる骨密度上昇効果はアレンドロネートより高い。
不動性骨粗しょう症(ねたきり、無動、無重力による)では骨吸収の亢進と骨形成の低下、高カルシウム血症をみる。ビスフォスフォネートは効果的である。
ビスフォスフォネートの骨吸収抑制はミノドロン酸(月1回内服)がアレンドロネートやリセドロネートより強い。さらに強力なゾレドロン酸は年1回注射でよい。
歯槽骨は感染による骨のリモデリングが活発におきているが、これを抑制することによってビスフォスフォネートによる顎骨壊死がおこる。ビスフォスフォネートによって骨が硬くなりすぎ、大腿骨転子下非定型骨折をおこすこともある。これら骨回転低下による副作用は副甲状腺ホルモン製剤テリパラチドで改善する。
ビスフォスフォネートの長期投与による弊害をさけるための目安として、5年間治療してT-score>-2.5まで骨密度が改善すれば中止してもよい。ビスフォスフォネートの種類により5-10年の間で継続を考える。ビスフォスフォネートを終了したあとラロキシフェン(RLX)投与でいったん上がった骨密度を維持できる。ラロキシフェン投与で骨密度は増えないが、生理的架橋を増やしAGE架橋を減らすため骨折は減る。骨粗しょう症の軽症者ではラロキシフェンの方がアレンドロネートより骨折予防効果がみられる。またラロキシフェンは高齢女性でのエストロジェン感受性乳がんを減らす効果もある。
高齢者ではビタミンD不足と活性低下があり、腸管からのカルシウム吸収が低下している。新しい活性型ビタミンD製剤エルデカルシトールは転倒防止効果もあり、効果的である。腎機能悪い人は高カルシウム血症に注意すること。
新しい有望な薬も次々に登場してきており、骨粗しょう症治療の将来の展望は明るい。

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