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2018年4月24日火曜日

港南区医師会情報システム部会平成29年度事業報告

情報システム部 部長 岡 正直
1.ホームページの運用・管理の充実を図った。
2.ORCA(日医標準レセプトソフト)への対応と普及に努めた。
3.日医・県医・他都市医師会並びに区医師会との連携を推進した。
4.横浜市医師会の部会に出席し市医との連携を推進した。
5.レセプト請求システムへの対応を行った。
6.iPadを利用してペーパーレス会議を行った。
7.災害時における通信手段を検討した。
8. ICTを活用した地域医療連携ネットワークの導入を検討した。
9.クラウドサービス(MCS)を活用して情報共有をさらに推進した。

2018年4月23日月曜日

「C型肝炎治療の最前線」野ツ俣和夫「B型肝炎治療におけるかかりつけ医と肝臓専門医の病診連携の必要性」藤山重俊

日本臨床内科医学会総会 ランチョンセミナー2 2018.04.15 京都ホテルオークラ
「C型肝炎治療の最前線」
    福井県済生会病院 肝疾患センター長 野ツ俣 和夫 先生
「B型肝炎治療におけるかかりつけ医と肝臓専門医の病診連携の必要性」
    くまもと森都総合病院 理事長・院長 藤山 重俊 先生


 直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals : DAAs)の登場により、肝硬変・肝がんの主な原因となるC型慢性肝炎は、ほぼ100%治癒しうる時代となった。今ではおよそ30万人がDAA治療を受けたと考えられるが、いまだに100万人から150万人がC型肝炎ウイルス(HCV)の感染を知りながら治療を受けていないと考えられている。患者への啓発も大事だが医療者側の認識不足は大きな問題である。特に院内でのHCV陽性者の放置は決して許されることではない。
 そこで演者が院内でHCV抗体陽性でありながらHCV-RNAの検査をしていない患者の拾い上げをしたところ、眼科、整形外科、脳外科に多いことが判明した。HCV感染者と判りながら肝機能(AST,ALT等)が正常のため放置されている患者でも、7割には線維化の進行があり、ひたすら発がんへの道を進んでいるのである。DAA治療は8~12週の内服薬のみで、さしたる副作用もなく、ALT値の高低に関わらずHCV-RNA陽性であれば、肝がん合併例や進行した肝硬変(非代償性肝硬変)例を除いた全ての患者が対象となる。まずはHCV抗体をチェックし、陽性者からHCV-RNAが検出されたら、速やかに肝臓専門医に紹介することである。
 有効な治療法が確立した現在、HCV感染者の放置は訴訟問題に発展し、敗訴により高額の賠償金を背負うリスクがある。またHCV感染は肝臓以外の病変を引き起こすことが分かってきた。癌、糖尿病、循環器疾患、呼吸器疾患、腎疾患など全身のあらゆる疾患に関係しているという。興味深いことに、HCVは脳細胞にも直接感染してこれを障害し、初老期のアルツハイマー病に類似した症状を呈するそうである。決して肝臓病だけの問題ではないという認識を新たにした。
 現状を打破するために、患者と医療者との橋渡しをする役目を担う「肝炎コーディネータ」の養成を厚生労働省が推進している。養成講座を受ければ誰でも肝炎コーディネータの資格を得ることができる。医院のスタッフを肝炎コーディネータにすることにより、医師の説明業務の軽減や職員のモチベーション向上などのメリットが期待される。
 一方、国内に130万人から150万人存在するとみられるB型肝炎ウイルス(HBV)感染者に対する決定的な治療法はまだないが、従来からのインターフェロン治療に加えて、核酸アナログ製剤の登場により、B型慢性肝炎の病勢のコントロールは大きく改善した。一度HBVに感染すると、HBVの遺伝子がcccDNAという形で感染者の肝細胞の核内に組み込まれるため、これを排除することは極めて困難である。しかしながら、核酸アナログ製剤の内服により、排除できないまでもウイルスの増殖を強力に抑制することが可能となった。インターフェロン治療に伴うような副作用や治療効果の不確実性も核酸アナログ製剤の場合はほとんどみられない。ただし効果を持続するためには長期間にわたって服用を続ける必要がある。主流のエンテカビル、テノホビルジソプロキシル(TDF)に続いて、効果は同等でありながら副作用が極めて少ないテノホビルアラフェナミド(TAF)が使用可能となり、長期間服用時の副作用リスクを大きく低下させることが可能となっている。
 かつて言われていたseroconversion(HBe抗原陰性化、HBe抗体陽性化)は臨床的治癒であるという認識は正しくなく、HBV-DNA高値例やHBs抗原高値例では発癌リスクが高いことが分かってきた。HBV感染者はHCV感染者と異なり、進行した肝硬変の段階を経ずして突然発癌することもありうる。また、HBV感染既往者(HBc抗体陽性またはHBs抗体陽性)でHBs抗原陰性の症例に、抗がん剤や免疫抑制剤による治療を行った際に劇症肝炎を発症し、「de novo B型肝炎」として知られるようになった病態にも格別の注意を払って診療にあたる必要がある。
 このように複雑な病態と難しい治療選択と長期にわたる経過観察が必要とされるHBV感染者に適切な診療を行うためには、肝臓専門医との継続的な連携が不可欠であることを再度強く認識した。
 HBVの感染ルートとして重視されてきた「母子感染」については、厚生労働省の長年の取り組みが功を奏して減少してきているが、その一方で性感染症としてのHBVの「水平感染」の拡大が大きな問題となってきている。おそらく性感染症として都市部で近年増加傾向の続く欧米型のゲノタイプAのHBV感染は、成人であっても急性肝炎発症後に慢性化しやすいことが分かってきた。
 一度感染すると治癒が困難をきわめるHBV感染症に対する根治的な治療法は、現在研究開発中の段階である。ただしHCVと違って、HBVに対しては感染予防のためのワクチンが以前から存在する。HBワクチンは世界180か国以上で国民全員が接種を受けるワクチン(ユニバーサルワクチン)になっている。遅まきながら日本でも2016年10月から0歳児を対象とした定期接種が始まった。HBV感染者を増やさないためにも、一人でも多くの人がHBワクチンを公費で接種できるようになることが望まれる。
 神奈川県内科医学会では「肝臓病を考える病診連携の会」講演会を平成16年より概ね年2回、神奈川県内各地を回りながら開催し、肝臓病非専門の実地医家に対する啓発と専門医との連携の機会の創出を図ってきた。また進歩のスピードの速い肝炎診療のエッセンスをわかりやすくまとめた小冊子を2年に一度発刊し、日常診療の参考に供するようにしてきた。演者のお二人がご講演の中で強調されていたように、有効な治療法の確立された現在、治療対象となる肝炎患者の拾い上げは極めて重要な課題である。この数年、横浜内科学会を中心として、より多くの肝疾患患者の拾い上げを進めるための「肝疾患管理病診連携ガイド」の普及を進めている。この活動については来る平成30年9月開催の第32回日本臨床内科医学会(パシフィコ横浜)で詳細な内容について発表される予定である。
(記 岡 正直)

「C型肝炎治療の最前線」野ツ俣和夫「B型肝炎治療におけるかかりつけ医と肝臓専門医の病診連携の必要性」藤山重俊

日本臨床内科医学会総会 ランチョンセミナー2 2018.04.15 京都ホテルオークラ
「C型肝炎治療の最前線」
    福井県済生会病院 肝疾患センター長 野ツ俣 和夫 先生
「B型肝炎治療におけるかかりつけ医と肝臓専門医の病診連携の必要性」
    くまもと森都総合病院 理事長・院長 藤山 重俊 先生

 直接作用型抗ウイルス薬(direct acting antivirals : DAAs)の登場により、肝硬変・肝がんの主な原因となるC型慢性肝炎は、ほぼ100%治癒しうる時代となった。今ではおよそ30万人がDAA治療を受けたと考えられるが、いまだに100万人から150万人がC型肝炎ウイルス(HCV)の感染を知りながら治療を受けていないと考えられている。患者への啓発も大事だが医療者側の認識不足は大きな問題である。特に院内でのHCV陽性者の放置は決して許されることではない。
 そこで演者が院内でHCV抗体陽性でありながらHCV-RNAの検査をしていない患者の拾い上げをしたところ、眼科、整形外科、脳外科に多いことが判明した。HCV感染者と判りながら肝機能(AST,ALT等)が正常のため放置されている患者でも、7割には線維化の進行があり、ひたすら発がんへの道を進んでいるのである。DAA治療は8~12週の内服薬のみで、さしたる副作用もなく、ALT値の高低に関わらずHCV-RNA陽性であれば、肝がん合併例や進行した肝硬変(非代償性肝硬変)例を除いた全ての患者が対象となる。まずはHCV抗体をチェックし、陽性者からHCV-RNAが検出されたら、速やかに肝臓専門医に紹介することである。
 有効な治療法が確立した現在、HCV感染者の放置は訴訟問題に発展し、敗訴により高額の賠償金を背負うリスクがある。またHCV感染は肝臓以外の病変を引き起こすことが分かってきた。癌、糖尿病、循環器疾患、呼吸器疾患、腎疾患など全身のあらゆる疾患に関係しているという。興味深いことに、HCVは脳細胞にも直接感染してこれを障害し、初老期のアルツハイマー病に類似した症状を呈するそうである。決して肝臓病だけの問題ではないという認識を新たにした。
 現状を打破するために、患者と医療者との橋渡しをする役目を担う「肝炎コーディネータ」の養成を厚生労働省が推進している。養成講座を受ければ誰でも肝炎コーディネータの資格を得ることができる。医院のスタッフを肝炎コーディネータにすることにより、医師の説明業務の軽減や職員のモチベーション向上などのメリットが期待される。
 一方、国内に130万人から150万人存在するとみられるB型肝炎ウイルス(HBV)感染者に対する決定的な治療法はまだないが、従来からのインターフェロン治療に加えて、核酸アナログ製剤の登場により、B型慢性肝炎の病勢のコントロールは大きく改善した。一度HBVに感染すると、HBVの遺伝子がcccDNAという形で感染者の肝細胞の核内に組み込まれるため、これを排除することは極めて困難である。しかしながら、核酸アナログ製剤の内服により、排除できないまでもウイルスの増殖を強力に抑制することが可能となった。インターフェロン治療に伴うような副作用や治療効果の不確実性も核酸アナログ製剤の場合はほとんどみられない。ただし効果を持続するためには長期間にわたって服用を続ける必要がある。主流のエンテカビル、テノホビルジソプロキシル(TDF)に続いて、効果は同等でありながら副作用が極めて少ないテノホビルアラフェナミド(TAF)が使用可能となり、長期間服用時の副作用リスクを大きく低下させることが可能となっている。
 かつて言われていたseroconversion(HBe抗原陰性化、HBe抗体陽性化)は決して臨床的治癒ではなく、HBV-DNA高値例やHBs抗原高値例では発癌リスクが高いことが分かってきた。HBV感染者はHCV感染者と異なり、進行した肝硬変の段階を経ずして突然発癌することもありうる。また、HBV感染既往者(HBc抗体陽性)でHBs抗原陰性の症例に、免疫抑制剤による治療を行った際に劇症肝炎を発症し、「de novo B型肝炎」として知られるようになった病態にも格別の注意を払って診療にあたる必要がある。
 このように複雑な病態と難しい治療選択と長期にわたる経過観察が必要とされるHBV感染者に適切な診療を行うためには、肝臓専門医との継続的な連携が不可欠であることを再度強く認識した。
 HBVの感染ルートとして重視されてきた「母子感染」については、厚生労働省の長年の取り組みが功を奏して減少してきているが、その一方で性感染症としてのHBVの「水平感染」の拡大が大きな問題となってきている。おそらく性感染症として都市部で近年増加傾向の続く欧米型のゲノタイプAのHBV感染は、成人であっても急性肝炎発症後に慢性化しやすいことが分かってきた。
 一度感染すると治癒が困難をきわめるHBV感染症に対する根治的な治療法は、現在研究開発中の段階である。ただしHCVと違って、HBVに対しては感染予防のためのワクチンが以前から存在する。HBワクチンは世界180か国以上で国民全員が接種を受けるワクチン(ユニバーサルワクチン)になっている。遅まきながら日本でも2016年10月から0歳児を対象とした定期接種が始まった。HBV感染者を増やさないためにも、一人でも多くの人がHBワクチンを公費で接種できるようになることが望まれる。
 神奈川県内科医学会では「肝臓病を考える病診連携の会」講演会を平成16年より概ね年2回、神奈川県内各地を回りながら開催し、肝臓病非専門の実地医家に対する啓発と専門医との連携の機会の創出を図ってきた。また進歩のスピードの速い肝炎診療のエッセンスをわかりやすくまとめた小冊子を2年に一度発刊し、日常診療の参考に供するようにしてきた。演者のお二人がご講演の中で強調されていたように、有効な治療法の確立された現在、治療対象となる肝炎患者の拾い上げは極めて重要な課題である。この数年、横浜内科学会を中心として、より多くの肝疾患患者の拾い上げを進めるための「肝疾患管理病診連携ガイド」の普及を進めている。この活動については来る平成30年9月開催の第32回日本臨床内科医学会(パシフィコ横浜)で詳細な内容について発表される予定である。
(記 岡 正直)

2018年4月17日火曜日

神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 2018.04.24

奈川県内科医学会 第2 ・消化器疾患対策委員会

日時 平成30424()1930~ 会場 神奈川県総合医療会館
1.開会
2.挨拶
3.議題
1平成29年度事業報告と平成30年度事業計画(資料1

2)肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~
2-1)第28回 平成30616日(土)(資料2
2-2)第29回 平成316頃 担当 第4地区
   
平成30年の秋は、9月の第32回臨床内科医学会(神奈川)に統合するため開催なし

3)創立50周年記念出版「これだけは知っておきたい肝臓病の知識」の進捗(資料3

4)横浜内科学会肝疾患抽出事業の進捗状況について(永井一毅 先生)

5)第32回日本臨床内科医学会(神奈川)の委員会講演枠とポスター発表
    【講演】 座長 岡 正直、永井一毅 先生
    「NASHについて」(仮)
         横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学教室准教授 斉藤 聡 先生
    【ポスター発表】
    「横浜内科学会肝疾患抽出事業の進捗状況について」
         神奈川県内科医学会 永井一毅 先生
    「社員健診での肝機能障害への対応(産業医の立場から)」 
         アズビル株式会社 統括産業医 今井鉄平 先生

6)消化管分野の委員の増員と消化管分野の勉強会の企画について

7)その他

4.次回開催  平成30年   月   日 ( 火 ) 1930

    参考:平成291114()1930

(資料1)
神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 平成29年度事業報告
 
1)肝疾患セミナー
平成29118日(水)19302040 崎陽軒本店6階会議室
共催 神奈川県内科医学会 ギリアドサイエンシズ株式会社
特別講演 座長 岡 正直
    「C型肝炎治療の現状と課題~C型肝炎患者のひろい起こしの重要性~」
  横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学教室准教授 斉藤 聡 先生
 
2)肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~
2-1)第26回 平成29617日(土)16001800
会場 TKPガーデンシティ横浜2
担当 第1地区 岡 正直   共催 MSD
【一般演題】 座長 永井一毅 先生
  「横浜内科学会肝疾患抽出事業の進捗状況について」   永井一毅 先生
  「社員健診での肝機能障害への対応(産業医の立場から)」 
    アズビル株式会社 統括産業医 今井鉄平 先生
【特別講演】 座長 多羅尾和郎 先生
  「新時代を迎えたC型肝炎のDAA治療~新たな感染者の掘り起こし~」
    埼玉医科大学病院 消化器内科・肝臓内科 教授 持田 智 先生
 
2-2)第27回 平成291111日(土)16001800
会場 川崎市医師会館 ホール1  
担当 第2地区 小林明文 先生   共催 大日本住友製薬
【一般講演】 座長 小林明文 先生
  「オーバーラップ症候群の治療例」
昭和大学藤が丘病院 消化器内科助教 上原なつみ 先生
  「肝疾患特異的尺度(CLDQ)を用いたDAA治療による健康関連QOLの推移」
聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科講師 池田裕喜 先生
【特別講演】 座長 川崎市立多摩病院 病院長 鈴木通博 先生
  「C型肝癌撲滅のための現状と課題」
聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科准教授 松本伸行 先生
 
3)ウイルス肝炎患者掘り起こし事業
 横浜内科学会肝疾患管理病診連携ガイド(永井一毅先生主導)の普及をはかった。
 
4)肝・消化器疾患対策委員会編集による肝疾患についての書籍の企画
 神奈川県内科医学会創立50周年記念企画のひとつとして企画した。
 分担執筆を完了し、第32回日本臨床内科医学会での販売をめざし準備中である。

神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 平成30年度事業計画
 
1)肝炎対策特別講演会
 最新の肝炎治療について、わかりやすい内容の講演会を企画する。
 
2)肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~
  第28回 平成30616日(土曜日)
  会場 ヴェルク横須賀
  担当 第3地区 池田隆明 先生 共催 EAファーマ
  ※秋の講演会は、第32回日本臨床内科医学会に統合するため開催なし。
 
3)第32回日本臨床内科医学会におけるスポンサードセミナーとポスター発表
  講演 「NASHについて」(仮)
      横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学教室准教授 斉藤 聡 先生
  ポスター発表
     「横浜内科学会肝疾患抽出事業の進捗状況について」 永井一毅 先生
     「社員健診での肝機能障害への対応(産業医の立場から)」 
    アズビル株式会社 統括産業医 今井鉄平 先生
 
4)ウイルス肝炎患者掘り起こし事業
 横浜内科学会肝疾患管理病診連携ガイド(永井一毅先生主導)のデータ収集をさらに進める。
 
5)肝・消化器疾患対策委員会編集による肝疾患についての書籍
 神奈川県内科医学会創立50周年記念企画のひとつとして第32回日本臨床内科医学会での販売をめざす。
 
6)消化管分野の会員の増員を図るとともに、消化管分野の勉強会を企画する。
(資料2)第28回「肝臓病を考える病診連携の会」

(資料3)「これだけは知っておきたい肝臓病の知識」

2018年4月14日土曜日

神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 平成30年度事業計画

神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 平成30年度事業計画

(1)肝炎対策特別講演会
 最新の肝炎治療について、わかりやすい内容の講演会を企画する。

(2)肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~
  第28回 平成30年6月16日(土曜日)
  会場 ベルク横須賀
  担当 第3地区 池田隆明 先生 共催 EAファーマ
  ※秋の講演会は、第32回日本臨床内科医学会に統合するため開催なし。

(3)第32回日本臨床内科医学会におけるスポンサードセミナーとポスター発表
  講演 「NASHについて」
      横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学教室准教授 斉藤 聡 先生
  ポスター発表
     「横浜内科学会肝疾患抽出事業の進捗状況について」 永井一毅 先生
     「社員健診での肝機能障害への対応(産業医の立場から)」 
    アズビル株式会社 統括産業医 今井鉄平 先生

(4)ウイルス肝炎患者掘り起こし事業
 横浜内科学会肝疾患管理病診連携ガイド(永井一毅先生主導)のデータ収集をさらに進める。

(5)肝・消化器疾患対策委員会編集による肝疾患についての書籍
 神奈川県内科医学会創立50周年記念企画のひとつとして第32回日本臨床内科医学会での販売をめざす。

神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 平成29年度事業報告

神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会 平成29年度事業報告

(1)肝疾患セミナー
平成29年11月8日(水)19:30~20:40 崎陽軒本店6階会議室
共催 神奈川県内科医学会 ギリアドサイエンシズ株式会社
特別講演 座長 岡 正直
    「C型肝炎治療の現状と課題~C型肝炎患者のひろい起こしの重要性~」
  横浜市立大学医学部 肝胆膵消化器病学教室准教授 斉藤 聡 先生

(2)肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~
(2-1)第26回 平成29年6月17日(土)16:00~18:00
会場 TKPガーデンシティ横浜2F
担当 第1地区 岡 正直   共催 MSD
【一般演題】 座長 永井一毅 先生
  「横浜内科学会肝疾患抽出事業の進捗状況について」   永井一毅 先生
  「社員健診での肝機能障害への対応(産業医の立場から)」 
    アズビル株式会社 統括産業医 今井鉄平 先生
【特別講演】 座長 多羅尾和郎 先生
  「新時代を迎えたC型肝炎のDAA治療~新たな感染者の掘り起こし~」
    埼玉医科大学病院 消化器内科・肝臓内科 教授 持田 智 先生

(2-2)第27回 平成29年11月11日(土)16:00~18:00
会場 川崎市医師会館 ホール1  
担当 第2地区 小林明文 先生   共催 大日本住友製薬
【一般講演】 座長 小林明文 先生
  「オーバーラップ症候群の治療例」
昭和大学藤が丘病院 消化器内科助教 上原なつみ 先生
  「肝疾患特異的尺度(CLDQ)を用いたDAA治療による健康関連QOLの推移」
聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科講師 池田裕喜 先生
【特別講演】 座長 川崎市立多摩病院 病院長 鈴木通博 先生
  「C型肝癌撲滅のための現状と課題」
聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科准教授 松本伸行 先生

(3)ウイルス肝炎患者掘り起こし事業
 横浜内科学会肝疾患管理病診連携ガイド(永井一毅先生主導)の普及をはかった。

(4)肝炎対策委員会編集による肝疾患についての書籍の企画
 神奈川県内科医学会創立50周年記念企画のひとつとして企画した。
 分担執筆を完了し、第32回日本臨床内科医学会での販売をめざし準備中である。

2018年4月13日金曜日

神奈川県内科医学会 総務企画部会 平成30年度事業計画

事業計画
総務企画部会(総務部会長 岡 正直)
(1)総務企画部会開催
 4月と奇数月に、概ね幹事会の前週に開催し、幹事会の議案について検討、県内科医学会事業の運営について審議し、担当部会との調整を図る。年間行事の計画立案と執行運営を行う。
(2)幹事会・会長会開催
 基幹会議の運営・進行を担当し、円滑な会務が遂行出来るよう会場設置、スポンサーの確保、出欠の把握、議事録の作成を行う。
(3)評議委員会・定時総会の計画と運営(5月26日)
 会則に則り、議案は総務企画部会で検討された後、幹事会で承認を受け、評議委員会・定時総会を経て決議する。今年度は学術講演会の開催なし。
(4)新春学術講演会(平成31年1月17日)の担当委員会(心臓血管病対策委員会と禁煙推進委員会)との調整
(5)第81回集談会(平成31年2月)の担当医会(横浜内科学会)との調整
(6)第32回日本臨床内科医学会(平成30年9月16日~17日)の開催準備および開催
(7)表彰者の募集と幹事会への提案
(8)各部会間の調整
(9)会則・細則の検討
※平成30年度の臨床医学研修講座は第32回日本臨床内科医学会に統合のため開催なし。

神奈川県内科医学会 総務企画部会 平成29年度事業報告

事業報告
総務企画部会(総務部会長 岡 正直)

(1)総務企画部会開催(6月5日、9月11日、11月6日、1月15日、3月5日、5月7日)
 隔月に幹事会の概ね前週に開催され、幹事会の議案について検討、県内科医学会事業の運営について、担当部会との調整を図った。年間行事の計画立案と日程調整、議事内容等の運営を担当した。

(2)幹事会・会長会開催( 6月15日、7月20日、9月21日、10月19日、11月16日、12月2日、1月18日、2月15日、3月15日、4月19日)
 基幹会議の運営・進行を担当し、円滑な会務が遂行出来るよう会場設置、スポンサーの確保、出欠の把握、議事録の作成を行った。

(3)評議委員会・定時総会・学術講演会(5月20日、横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ)
 議案は総務企画部会で検討された後、幹事会で承認を受け、評議委員会・定時総会で議論され承認された。平成28年度事業報告、平成29年度の事業計画、平成28年度決算報告、平成29年度予算案等の議案が議論され承認を受けた。横浜市立大学と海老名内科医会に感謝状が贈呈され、各地区からの推薦者に表彰状が贈呈された。第80回集談会の優秀演題「高齢者のピロリ除菌は何歳まで行うべきか 年齢別による除菌後の内視鏡所見の改善度と組織学的変化の検討」の発表者の南毛利内科抗加齢/人間ドックセンターの内山順三先生と「当院における睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治験」の発表者の海老名ハートクリニック脳神経外科の矢部熹憲先生に表彰状が贈呈された。12の事業委員会の報告は質疑のみの受付とし、定時総会を終了した。
 引き続き定時総会時学術講演会が行われた。高血圧・腎疾患対策委員会委員長佐藤和義先生が座長を務めた講演1の内容を簡単に紹介する。

 1.「CKDに克つための血圧管理とは」横浜市立大学医学部循環器・腎臓内科学主任教授 田村功一先生
 我が国に非常に多い慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や高血圧や心血管病を、演者の教室では「心血管腎臓病」として一体的に捉えてアプローチしている。重症動脈硬化による足趾の壊死性病変や急性腎障害に対して行われるLDL吸着療法は血管内皮細胞の活性化を介して効果を発揮するため、正コレステロールの人でも効果的であり先進医療の対象の医療技術として認められている。
 CKDとは、(1)アルブミン尿や血尿といった腎障害、(2)eGFR<60といった腎機能低下、(1)(2)いずれか、または両方が3か月以上続くものと定義される。末期腎不全者の総数は増加しているが、かつて多くを占めた慢性糸球体腎炎は減少傾向で、糖尿病性腎症や高血圧による腎硬化症が増加している。できれば自覚症状を伴わない微量アルブミン尿の段階で生活習慣病をしっかり治療することが望ましいが、実際には不可逆的な腎の線維化がおこり、GFRの低下が始まった段階から治療に入る場合が多く、十分な治療効果が得られないことが多い。CKDの重症度は血液検査(eGFR)と検尿(アルブミン尿)との組み合わせで評価する。
 CKDの治療は(1)肥満やストレスの解消や禁煙・節酒といった「生活習慣の改善」、(2)減塩・水分摂取・蛋白制限などの「食事療法」、(3)血圧管理のための「薬物療法」を行う。血圧管理目標は、蛋白尿陽性あるいは糖尿病合併の場合130/80以下とする。ただし米国SPRINT研究で示されたように、収縮期血圧120未満の「厳格降圧群」では複合心血管病は減少したが、腎不全は減らなかったことをみると、脳心血管病とCKDでは降圧の意味合いが異なるようである。
 CKDの血圧管理においては血圧の日内変動にも注目する必要がある。降圧の質を向上させるためにも診察室血圧以外も見ていくことが重要である。24時間自由行動下血圧測定(ambulatory blood pressure monitoring:ABPM)によれば、夜間血圧が下がらない(non-dipper)あるいは上昇する(riser)人がCKDでは多くみられる。食塩9.8gから4.4g/日の減塩により、収縮期マイナス10、拡張期マイナス4の降圧が得られるという。また早朝高血圧の人は降圧薬の就寝前服用のほうが腎障害改善効果が得られやすい。そこでCKDに克つための血圧管理としては(1)減塩、(2)少量の利尿薬、(3)時間医学的な介入、(4)長時間作用型の降圧薬により夜間の血圧を下げ、血圧の変動性を抑えることである。
 演者らの最新の研究から、ATRAP(angiotensinⅡ receptor-associated protein)とCKDについての話題を提供したい。ATRAPはAT1受容体への結合蛋白質であり、脂肪組織や腎臓に多く発現している。CKDなどの腎障害により、腎臓におけるATRAPの発現が低下すると、ナトリウム再吸収チャネルが増えてナトリウムの再吸収が亢進し、高血圧がすすむことでCKDが増悪するという悪循環が起こっていると考えられる。したがってATRAPの活性化を図ることによってCKDの進行を抑制することを期待し、現在研究を進めているところである。

 次に神奈川県内科医学会幹事長谷川修先生が座長を務めた講演2の内容を簡単に紹介する。

 2.「環境因性神経疾患(公害病・医原病)~医師による気づきの重要性~」鈴鹿医療科学大学大学院医療科学研究科長 看護学部看護学科教授 葛原茂樹先生
 神経内科の診療においては、検査データよりも患者を直接見たり触ったりすることが役立つことが多い。本当は公害病であったり、医原病であったりした様々な神経疾患の正しい原因に迫るため医師による気づきがいかに重要かということについてお話ししたい。
 1950年代後半に熊本県水俣市を中心として視野狭窄や小脳失調をきたし、痙攣を起こして死に至る奇病が多発し、やがて水俣にとどまらず有明海沿岸全体に拡大する傾向が見られた。1940年に英国で報告されたメチル水銀への直接暴露によるハンター・ラッセル症候群によく似た症状だったが、原因物質の特定に時間がかかり、最終的にチッソ水俣工場の排水に起因する食物連鎖によるメチル水銀中毒と判明したが、工場責任者による隠ぺい工作や学者間での意見の対立などもあり、当時の厚生省による事実の認定が遅れ被害が拡大した。
 1955年頃、激しい下痢と腹痛、下肢の痺れ痛み麻痺、視力障害から失明に至り、痙攣を起こして死亡する疾患が報告され、亜急性脊髄視神経症(subacute myelo-optico-neuropathy:SMON)と命名された。1967~1968年頃全国で多発し、ウイルス感染症説がマスコミに流れたためパニックとなり、患者は不当な差別と偏見にさらされ、一家心中まで起きる事態となった。SMON患者は緑の舌、緑の尿、緑の便が特徴的で、これは整腸薬キノホルムと鉄のキレートと判明した。キノホルムの添付文書には「腸管から吸収されない」と書かれており、当時多くの外科医が手術前後の腸管内の殺菌のため大量のキノホルムを投与していた。大規模なカルテの調査により、キノホルムを多く投与された患者にSMONが発症していること、また実はキノホルムは腸管からよく吸収されることも分かり、SMONの原因はキノホルムによる神経障害であることが確定し、1970年にキノホルムの販売中止後SMONの発症は無くなった。この事件から薬剤誘発性の疾患は疫病と見分けがつきにくいという教訓を得るとともに、「健康被害救済制度」と「難病対策と研究班」の2つの制度が生まれるきっかけとなった。
 南九州、四国南部、沖縄と北海道、東北に見られるAdult T-cell leukemia(ATL)の原因ウイルスは、縄文人が保有していたと考えられているHuman T-lymphotropic virus(HTLV-1)である。ATLの分布と重なるように特徴的な神経疾患がみられる。慢性の脊髄の炎症により、進行性の歩行障害や膀胱直腸障害をきたす。その患者の髄液中にATL細胞が観察されたことより、ATLと共通の病原体HTLV-1が原因と考えられHTLV-1 associated myelopathy(HAM)と命名された。このウイルスは母乳を介して乳幼児期に感染し中年期になってから発症することが分かった。
 1980年代に高齢者に対して多くの「脳循環代謝改善薬」が発売され、多くの患者に投与された一時期があった。脳の代謝を活発にする薬理作用を持つとされ、脳梗塞や脳出血に伴う意欲低下、情緒障害を適応としていた。当時は痴呆に対する有効な治療法がないことから医療現場で広く使われていたが、一部の患者に肝臓の急性脂肪変性(Reye様症候群)を発症し、消化器症状から昏睡状態になり死亡する例がみられた。また「脳循環代謝改善薬」の多くは効果がないことがわかり、承認を取り消された。また1987年に、急速に進行する無動と筋強剛により数か月で寝たきり状態となる症例を経験した。片頭痛発作の予防薬であるカルシウム拮抗薬塩酸フルナリジンによる薬剤性パーキンソン病と判明した。
 中心静脈栄養を行う際にも、欠乏症や過剰症に注意する必要がある。ビタミンB1欠乏による部分的眼球運動障害、運動失調、記憶障害を伴うウェルニッケ脳症、マンガンイオン過剰によるパーキンソン様症状、易怒性、幻覚を伴うマンガン脳症、セレン欠乏症による心筋壊死、軟骨の変性、甲状腺機能低下とセレン過剰症による胃腸障害、末梢神経障害、爪の変形や脱毛などである。
 最近次々と発売される新薬や先進医療の副作用にも注意する必要がある。医薬品医療機器総合機構(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency:PMDA)の報告書によく目を通しておくことである。
 気づきの能力を高めるためには、患者をよく見て、よく診て、数多くみる。そして何か変だと思ったら、情報を集める。同業者からの情報や文献により不足を補うようにすれば、知識が無ければ見逃すことも、しっかり気づくことができるようになるであろう。

 講演会終了後、別室にて情報交換会が行われ、盛会の内に終了した。

(4)第42回臨床医学研修講座
 第42回臨床医学研修講座が平成29年9月2日(土)午後3時より川崎日航ホテル12階「西の間」にて聖マリアンナ医科大学と第二地区川崎市内科医会の担当で開催された。6つの講演の内容を簡単にご紹介する。

講演1『知って得するAS診療:聴診~TAVIまで』
座長:神奈川県内科医学会 神奈川高血圧・腎疾患他作委員会委員  堺 浩之
演者:聖マリアンナ医科大学 循環器内科 講師 出雲 昌樹 先生
 高齢者の増加に伴い、退行性変化による弁膜症とくに大動脈弁狭窄(aortic stenosis:AS)が増加している。無症状の患者も多いが、症状が現れると急速に悪化し予後不良である。ASによる突然死は決して多くはなく、心機能低下に伴う症状に苦しむ患者が多い。薬物治療による予後改善効果はなく、外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)が効果的であったが、経カテーテル大動脈弁植込(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)が登場するまでは、手術例は50%ほどにとどまっていた。近年TAVIを行う症例が増え、適応範囲も拡大している。TAVIの適応は、弁口面積、流速、圧格差、左室駆出率、自覚症状を心エコーや問診で評価することにより決定する。圧格差の少ない患者にも予後不良例が多いことに注意すべきである。ASによる左心室への負荷により心筋が肥大して心拍出量が減少し圧格差が出にくくなるためである。最近のデータでは、高リスクのみならず中リスクの患者においてもTAVIの成績はSAVRを上回っており、今後さらにTAVIによる治療を推進していきたいと考えている。

講演2『虚血性脳卒中における抗血栓療法』
座長:神奈川県内科医学会 心臓血管病対策委員会委員長  國島 友之
演者:聖マリアンナ医科大学 神経内科 准教授 秋山 久尚 先生
 脳梗塞の分類として、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、脳塞栓、動脈解離、血管炎、また原因がよくわからないものとして潜因性脳梗塞があり、その中でとくにembolic stroke of undetermined source(ESUS)が注目されている。ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞に対しては抗血小板療法を、心原性、その他に対しては抗凝固療法を行う。急性期の治療として、発症4.5時間以内にrt-PA(アルテプラーゼ)による抗凝固療法を行う。抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT アスピリンとクロピドグレル)は急性期においては有効である。再発予防のためには、ワーファリンよりも頭蓋内出血リスクの少ない直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC いままでのNOACと同じもの)を使用する。脳塞栓の原因の多くを占める潜在している非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)の検出のためには、テレメトリー式心電計(duranta)や植込み型心臓モニター(ICM)などの長時間心電図モニタリングが有用である。DOAC使用中の緊急手術などの事態に対しては、DOACの中和剤が利用できるようになった。DOACの中止により20倍のリスク上昇があるため、不用意に中止しないこと。

講演3『プロトンポンプ阻害剤長期投与の有用性と課題』
座長:神奈川県内科医学会  服部 隆志
演者:聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科 病院教授 安田 宏 先生
 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期投与の適応となるのは、胃食道逆流症(GERD)の患者とNSAIDsや抗血栓療法により消化管出血のリスクの高い患者である。ヘリコバクタピロリ感染症の減少や高脂肪食、過食により日本人の酸分泌は増加している。
 びらん性GERD、Barrett食道、亀背を伴う高齢者と高度裂孔ヘルニア症例にはPPI長期投与が勧められる。また、抗血栓薬やNSAIDsはcox-1やcox-2阻害により粘膜障害を引き起こすので、PPI長期投与が望ましい。消化性潰瘍発症時に抗血栓薬を中止すると心血管イベントを起こしやすいので、できるだけ中止しないことである。
 PPI長期投与に伴うデメリットは、胃底腺ポリープの多発、parietal cell protrusion(PCP)、死亡率や認知症の増加?、急性間質性腎炎、市中肺炎増加、カルシウム骨代謝の抑制、チエノピリジン系薬剤との相互作用、コラーゲン大腸炎、腸内細菌叢の変化などである。

講演4『病者に寄り添う』
座長:神奈川県内科医学会副会長  出川 寿一
演者:聖マリアンナ医科大学 特任教授・宗教主事 小田 武彦 先生
 宗教者とは、自分を超えた存在に自らを委ねて生きたいと願っている求道者のことである。聖書は「愛さない者は死の中に留まっている」という。愛さないことは、精神的死を意味する。病者に寄り添うとき、彼らの疑問に対して答えることはしない。病者が持っている宝物に彼ら自身が気づく手助けをするのである。日本人の7割は無宗教であるため、病者の宗教心は問題にすることはない。傾聴により病者の感情に寄り添い、内面の痛みを受け止めようとしている。聖マリアンナ医大では希望者にジャン・ギ・デュポンの「病気の時の祈り」を無料配布している。病気になった時こそ自らの大切なものに気づくチャンスなのだという。阪神淡路大震災をきっかけに宗教者の宗派の違いを超えて協力する動きが始まった。東日本大震災でさらに大きなうねりとなり、多くの大学で「臨床宗教師」の養成が始まっている。あなたの身近にも訓練を受けた宗教者がいるかもしれない。

講演5『関節リウマチ治療における最新の潮流』
座長:川崎市内科医会幹事  大曽根 康夫
演者:聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科 教授 川畑 仁人 先生
 慢性関節リウマチは、朝のこわばりなどの症状で発症し、関節の腫脹疼痛きたし、関節の変形や骨びらんにいたる難治性の疾患である。その治療の原則は(1)早期治療(2)treat to target目標達成に向けた治療(3)tight control強化治療である。抗リウマチ薬としてメトトレキセート(MTX)を第一選択薬とし、ステロイドを抗リウマチ薬と認識し積極的に併用を推奨する。予後不良因子があれば次の段階として生物学的製剤を使用する。分子標的薬のJAK阻害薬は生物学的製剤と同じ位置づけとなっている。
 日本最大であるNinjaリウマチデータベースによる最新の潮流では、MTXの使用量は増えてはいるが頭打ちで抗リウマチ薬の併用が増えている。ステロイドの使用は減っており、生物学的製剤では非TNF製剤の単剤使用が増えている。これらの傾向は日本におけるリウマチ患者の高齢化や発症年齢の高齢化を反映したものと考えられる。
 まとめると、寛解未達成は6割に及ぶため治療ストラテジの改良が必要である。発症して6ヶ月間がwindow of oppotunityであり、薬剤フリーの寛解達成のためには早期治療開始が重要である。挙児希望者、高齢者、有合併症者への治療指針が求められる。寛解達成者の出口戦略や予防の概念について考えることも必要である。

講演6『慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する気管支鏡的治療』
座長:神奈川県内科医学会 神奈川呼吸器疾患対策委員会委員  新井 理之
演者:聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科 教授 峯下 昌道 先生
 近年増加傾向のCOPDの外科治療としては、肺移植や肺容量減少術などがあるが、大きな侵襲を伴う点が問題である。肺炎罹患後に偶発的に肺容量が減少し、呼吸状態の改善をみる症例を経験したことから、同様のことを気管支内視鏡を用いて行うことができるのではないかと考えた。すなわち気管支内視鏡的肺容量減量術であり、肺気腫型COPDが適応となる。血流シンチにより、血流の乏しい部位を標的とする。2つの手技を紹介する。ひとつめはendobronchial one-way valveを用いるもので、葉間胸膜がしっかりしている症例が適応となる。標的とする部位への気管支内に、一方向だけ通気する弁を気管支鏡で留置し、その末梢の肺を虚脱させるものである。ふたつめは形状記憶コイルを用いるもので、肺の過膨張を伴う症例が適応となる。肺の組織が少ないものは適さない。直線的な形にした金属を標的部位の気管支に気管支鏡を用いて挿入すると、金属がもとのコイル状の形状に復元するにつれて、周りの肺組織を巻き込んでいくものである。

 研修講座終了後に、情報交換の会が行われた。

(5)平成30年新春学術講演会
 平成30年新春学術講演会は平成29年1月18日(木)横浜ベイシェラトンホテル&タワーズにて高血圧・腎疾患対策委員会の担当で開催された。以下に2つの講演内容を簡単に紹介する。

講演1「生活習慣病治療における配合薬の意義~高血圧・糖尿病を中心に~」
座長:神奈川県内科医学会糖尿病対策委員会 委員長 松葉育郎
演者:神奈川県内科医学会 会長 宮川政昭
 治療抵抗性高血圧(糖尿病)とみなされる病態には、純粋に医学的なもの以外の要因もあるのではないだろうか。言い換えれば「治療不十分高血圧(糖尿病)」であり、これに適切に対処するためには、個々の患者の生活パターンに配慮した「患者との治療同盟」が必要であろう。
 患者の服薬アドヒアランスを高めるためには配合薬の利用も一つの手段である。医師、薬剤師、患者、介護士4者の薬物療法に対する実態調査によれば、医師、薬剤師の望むのはエビデンスのそろっている薬である一方、患者、介護士の望むのは服薬回数の少ない薬であるという。配合薬により患者にとっては薬剤費が安くなり、介護士にとっては飲み残しの薬が減るメリットがある。また患者の半数以上は配合薬により治療意欲が向上するという。患者の想いと医療者の考えの溝を埋める努力が必要である。
 臨床医の悩みとして、配合薬の種類が多すぎて、区別がつかない、覚えられないという声がある。しかし配合薬は多くを覚えなくても3~4個で十分である。降圧薬の配合についていえば、RA系の降圧薬には少量の利尿薬を合わせることにより良好な血圧コントロールが得られる。ARBとCCBの組み合わせではCCB増量により高い血圧はよく下げるが低い血圧はあまり下げないですむ。ただし、むくみに注意すること。
 治療抵抗性高血圧(糖尿病)の患者の8割は処方通りに服薬していないという。治療効果を高めるためには、患者の生活についての聞き取りを行い、生活リズムにあった治療パターンを組み立てるのがよい。これこそが治療同盟を目指したわれわれの実地臨床の姿である。

講演2「日本人の高血圧の成因と最適治療法の研究」
座長:神奈川県内科医学会 会長 宮川政昭
演者:慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 名誉教授 猿田享男
 平成28年度井村臨床研究賞受賞記念論文「日本人における高血圧の特徴と最適治療法の研究」に基づく講演である。高血圧の原因としては「本態性高血圧」が多くを占める。原発性アルドステロン症(PA)について最近のJSH2014の基準を適応すれば、高血圧症例の12%以上を占めており、2次性高血圧のなかではPAが最多であることが、日本臨床内科医会アルドステロン症研究によってわかった。さて、本態性高血圧症の成因として(1)腎からのナトリウム・水排泄の障害(2)中枢における交感神経系の異常(3)レニン・アンギオテンシン系の異常(4)ナトリウム利尿ホルモンの異常(5)カルシウム代謝異常、などが考えられる。5つの成因について豊富なデータを示しながら詳しく説明した。また、これらが相互に複雑に影響を与えながら本態性高血圧の病態を形作っていることも示した。
 高血圧の治療については、大規模臨床試験の結果を踏まえ、ガイドラインが改訂されるたびに、高血圧の定義と推奨される薬剤も変遷を遂げてきた。演者が代表研究者を務めたCASE-J研究においては、ARBカンデサルタンとCCBアムロジピンとの比較において、降圧、イベント、副作用において差がないことがわかった。しかし、その後の臨床研究において納得のいかない結果が出たことについて、おかしいと思っていたが、のちにデータの偽装があったことが判明したのは周知のとおりである。最近アメリカ心臓協会が示した、130/80以上を高血圧とする新しい基準を、我が国のガイドラインに反映させるかどうかは検討を要する。今後の高血圧の診療においては、家庭血圧をさらに重視することが求められよう。

 講演会終了後、別室で情報交換会が行われた。

(6)集談会
 平成30年9月16~17日に神奈川県内科医学会の主管で行われる第32回日本臨床内科医学会に集約するため、今年度は集談会は開催されなかった。

(7)日本臨床内科医会関連業務
 日本臨床内科医会との連絡窓口として、会員への情報提供を行った。また平成30年9月16日と17日に開催予定の第32回日本臨床内科医学会を神奈川県内科医学会主管で実行するための準備委員会を必要に応じて開催し(10月2日、2月5日、4月9日)、協力企業ゴールデンチャイルド社と近畿日本ツーリストとともに準備を進めた。

(8)おわりに
 平成29年度からは神奈川県内科医学会は宮川政昭会長体制の第2期目となり、総務企画部会に新たに企画部長として國島友之先生を迎え体制が強化された。長い歴史のある本体事業に新たな変更や発展を加えつつ、いよいよ目前に迫ってきた平成30年の第32回日本臨床内科医学会を成功させるため、全会員のご支援・ご協力をお願いしたい。

2018年4月12日木曜日

神奈川県内科医学会 新春学術講演会 2018.01.18

「生活習慣病治療における配合薬の意義~高血圧・糖尿病を中心に~」
神奈川県内科医学会 会長 宮川政昭

治療抵抗性高血圧(糖尿病)とみなされる病態には、純粋に医学的なもの以外の要因もあるのではないだろうか。言い換えれば「治療不十分高血圧(糖尿病)」であり、これに適切に対処するためには、個々の患者の生活パターンに配慮した「患者との治療同盟」が必要であろう。
患者の服薬アドヒアランスを高めるためには配合薬の利用も一つの手段である。医師、薬剤師、患者、介護士4者の薬物療法に対する実態調査によれば、医師、薬剤師の望むのはエビデンスのそろっている薬である一方、患者、介護士の望むのは服薬回数の少ない薬であるという。配合薬により患者にとっては薬剤費が安くなり、介護士にとっては飲み残しの薬が減るメリットがある。また患者の半数以上は配合薬により治療意欲が向上するという。患者の想いと医療者の考えの溝を埋める努力が必要である。
臨床医の悩みとして、配合薬の種類が多すぎて、区別がつかない、覚えられないという声がある。しかし配合薬は多くを覚えなくても3~4個で十分である。降圧薬の配合についていえば、RA系の降圧薬には少量の利尿薬を合わせることにより良好な血圧コントロールが得られる。ARBとCCBの組み合わせではCCB増量により高い血圧はよく下げるが低い血圧はあまり下げないですむ。ただし、むくみに注意すること。
治療抵抗性高血圧(糖尿病)の患者の8割は処方通りに服薬していないという。治療効果を高めるためには、患者の生活についての聞き取りを行い、生活リズムにあった治療パターンを組み立てるのがよい。これこそが治療同盟を目指したわれわれの実地臨床の姿である。

「日本人の高血圧の成因と最適治療法の研究」
慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 名誉教授 猿田享男

平成28年度井村臨床研究賞受賞記念論文「日本人における高血圧の特徴と最適治療法の研究」に基づく講演である。高血圧の原因としては「本態性高血圧」が多くを占める。原発性アルドステロン症(PA)について最近のJSH2014の基準を適応すれば、高血圧症例の12%以上を占めており、2次性高血圧のなかではPAが最多であることが、日本臨床内科医会アルドステロン症研究によってわかった。さて、本態性高血圧症の成因として(1)腎からのナトリウム・水排泄の障害(2)中枢における交感神経系の異常(3)レニン・アンギオテンシン系の異常(4)ナトリウム利尿ホルモンの異常(5)カルシウム代謝異常、などが考えられる。5つの成因について豊富なデータを示しながら詳しく説明した。また、これらが相互に複雑に影響を与えながら本態性高血圧の病態を形作っていることも示した。
高血圧の治療については、大規模臨床試験の結果を踏まえ、ガイドラインが改訂されるたびに、高血圧の定義と推奨される薬剤も変遷を遂げてきた。演者が代表研究者を務めたCASE-J研究においては、ARBカンデサルタンとCCBアムロジピンとの比較において、降圧、イベント、副作用において差がないことがわかった。しかし、その後の臨床研究において納得のいかない結果が出たことについて、おかしいと思っていたが、のちにデータの偽装があったことが判明したのは周知のとおりである。最近アメリカ心臓協会が示した、130/80以上を高血圧とする新しい基準を、我が国のガイドラインに反映させるかどうかは検討を要する。今後の高血圧の診療においては、家庭血圧をさらに重視することが求められよう。