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2018年5月28日月曜日

学会の動き(神内医ニュース第80号)

学会の動き(神内医ニュース第80号) 総務部会長 岡 正直
 神奈川県内科医学会総務企画部会が企画担当している講演会は、定時総会時学術講演会、臨床医学研修講座、新春学術講演会そして集談会の4つです。
【平成30年新春学術講演会報告】
 平成30年新春学術講演会は平成30年1月18日(木)横浜ベイシェラトンホテル&タワーズにて高血圧・腎疾患対策委員会の担当で開催されました。以下に2つの講演内容を簡単に紹介します。
講演1「生活習慣病治療における配合薬の意義~高血圧・糖尿病を中心に~」
座長:神奈川県内科医学会糖尿病対策委員会 委員長 松葉育郎
演者:神奈川県内科医学会 会長 宮川政昭
 治療抵抗性高血圧(糖尿病)とみなされる病態には、純粋に医学的なもの以外の要因もあるのではないだろうか。言い換えれば「治療不十分高血圧(糖尿病)」であり、これに適切に対処するためには、個々の患者の生活パターンに配慮した「患者との治療同盟」が必要であろう。
 患者の服薬アドヒアランスを高めるためには配合薬の利用も一つの手段である。医師、薬剤師、患者、介護士4者の薬物療法に対する実態調査によれば、医師、薬剤師の望むのはエビデンスのそろっている薬である一方、患者、介護士の望むのは服薬回数の少ない薬であるという。配合薬により患者にとっては薬剤費が安くなり、介護士にとっては飲み残しの薬が減るメリットがある。また患者の半数以上は配合薬により治療意欲が向上するという。患者の想いと医療者の考えの溝を埋める努力が必要である。
 臨床医の悩みとして、配合薬の種類が多すぎて、区別がつかない、覚えられないという声がある。しかし配合薬は多くを覚えなくても3~4個で十分である。降圧薬の配合についていえば、RA系の降圧薬には少量の利尿薬を合わせることにより良好な血圧コントロールが得られる。ARBとCCBの組み合わせではCCB増量により高い血圧はよく下げるが低い血圧はあまり下げないですむ。ただし、むくみに注意すること。
 治療抵抗性高血圧(糖尿病)の患者の8割は処方通りに服薬していないという。治療効果を高めるためには、患者の生活についての聞き取りを行い、生活リズムにあった治療パターンを組み立てるのがよい。これこそが治療同盟を目指したわれわれの実地臨床の姿である。
講演2「日本人の高血圧の成因と最適治療法の研究」
座長:神奈川県内科医学会 会長 宮川政昭
演者:慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 名誉教授 猿田享男
 平成28年度井村臨床研究賞受賞記念論文「日本人における高血圧の特徴と最適治療法の研究」に基づく講演である。高血圧の原因としては「本態性高血圧」が多くを占める。原発性アルドステロン症(PA)について最近のJSH2014の基準を適応すれば、高血圧症例の12%以上を占めており、2次性高血圧のなかではPAが最多であることが、日本臨床内科医会アルドステロン症研究によってわかった。さて、本態性高血圧症の成因として(1)腎からのナトリウム・水排泄の障害(2)中枢における交感神経系の異常(3)レニン・アンギオテンシン系の異常(4)ナトリウム利尿ホルモンの異常(5)カルシウム代謝異常、などが考えられる。5つの成因について豊富なデータを示しながら詳しく説明した。また、これらが相互に複雑に影響を与えながら本態性高血圧の病態を形作っていることも示した。
 高血圧の治療については、大規模臨床試験の結果を踏まえ、ガイドラインが改訂されるたびに、高血圧の定義と推奨される薬剤も変遷を遂げてきた。演者が代表研究者を務めたCASE-J研究においては、ARBカンデサルタンとCCBアムロジピンとの比較において、降圧、イベント、副作用において差がないことがわかった。しかし、その後の臨床研究において納得のいかない結果が出たことについて、おかしいと思っていたが、のちにデータの偽装があったことが判明したのは周知のとおりである。最近アメリカ心臓協会が示した、130/80以上を高血圧とする新しい基準を、我が国のガイドラインに反映させるかどうかは検討を要する。今後の高血圧の診療においては、家庭血圧をさらに重視することが求められよう。
 講演会終了後、別室で情報交換会が行われ、和やかな雰囲気のうちに終了いたしました。
【第81回集談会予告】
 例年2月に開催される集談会は、平成30年に限っては、9月に行われる第32回日本臨床内科医学会に統合されるため開催されませんでした。第81回集談会は平成31年2月に第1地区横浜内科学会の担当で開催予定です。
【平成30年度定時総会報告】
 平成30年5月26日(土)に神奈川県総合医療会館会館にて平成30年度定時総会が開催されました。平成30年に限っては、9月に行われる第32回日本臨床内科医学会に力を集中するため、議事と表彰のみで学術講演会は行われませんでした。
 午後4時より岡幹事の司会により評議員会を開始、山本副会長の開会挨拶に続いて宮川会長の挨拶があり、原幹事が議長に推薦されました。平成29年度の事業報告を國島幹事、決算承認を井野元幹事と正山監事、平成30年度の事業計画を國島幹事、予算承認を井野元幹事が説明し、すべての議案が承認されました。小野副会長の閉会挨拶のあと、午後4時22分より永井幹事の司会により定時総会を開始、岩澤副会長の開会挨拶に続いて宮川会長の挨拶があり、物故会員への黙祷のあと、宮川会長が議長に選出されました。原幹事より評議員会報告があり、議案の説明は評議員会と同じ幹事および監事が行い、すべて承認されました。
 表彰式では、平成29年の第42回臨床医学研修講座を担当した聖マリアンナ医科大学に感謝状が贈呈され、引き続き第1地区から第5地区より推薦された会員に表彰状が贈呈されました。その後、12の事業委員会の委員長または副委員長により事業委員会報告が行われ、最後に出川副会長の閉会の挨拶にて会は午後6時に終了いたしました。
【第32回日本臨床内科医学会予告】
 平成30年9月16日(日)と17日(月祝)にパシフィコ横浜にて第32回日本臨床内科医学会が当会主催で開催予定です。協力企業ゴールデンチャイルド社と近畿日本ツーリストとともに準備は最終段階に入っています。詳細はウェブサイトhttp://kanagawamed.org/jpa32/を参照ください。会を成功させるため、ぜひ多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。
【第43回臨床医学研修講座予告】
 平成30年の臨床医学研修講座は9月の第32回日本臨床内科医学会に統合するため開催されません。第43回臨床医学研修講座は平成31年(2019年)の秋に北里大学と第5地区担当で行われる予定です。
【おわりに】
 平成29年度からは神奈川県内科医学会は宮川政昭会長体制の第2期目となり、総務企画部会に新たに企画部長として國島友之先生を迎え体制が強化されました。長い歴史のある本体事業に新たな変更や発展を加えつつ、いよいよ目前に迫ってきた平成30年の第32回日本臨床内科医学会を成功させるため、全会員のご支援・ご協力をお願い申し上げます。

第32回日本臨床内科医学会 ポスター発表「神奈川県内科医学会 肝・消化器疾患対策委員会のあゆみ」抄録

今世紀のはじめ、我が国の多くのC型慢性肝炎・肝硬変患者が病気の進行につれ発がんの時期に達し、年間約3万人が肝がんにより死亡するという状況となっていた。そこで臨床の現場において慢性肝炎と肝硬変・肝がんの知識を実地医療に携わる多くの臨床医に広く啓発し、専門医療機関との病診連携を進め、肝硬変・肝がんに罹患する患者を減らすため、当委員会は「肝炎対策委員会」の名称のもと平成14年(2002年)に発足した。当初その活動の中核は、神奈川県立がんセンター多羅尾和郎顧問と神奈川県内科医学会(故)中山脩郎会長の尽力により平成16年(2004年)に始まった「肝がん撲滅を目指す病診連携の会」(のちに「肝臓病を考える病診連携の会」と改名)のサポートを行うことであった。平成21年(2009年)に多羅尾委員が委員長に就任してから委員会の活動の幅が広がり、肝炎対策特別講演会の開催、市民公開講座の共催、小冊子「これだけは知っておきたいC型・B型肝炎の知識」の定期発行やウイルス肝炎患者掘り起こし事業まで活動の幅が広がってきている。平成30年(2018年)より、委員会の名称を「肝・消化器疾患対策委員会」と改め、消化管の領域も含めてさらなる活動の広がりを目指している。

2018年5月1日火曜日

第4回情報システム事業部会 2018.03.27

4回情報システム事業部会
平成30327()午後730  横浜市医師会大会議室
会長挨拶
 
議 題
1.平成29年度日本医師会医療情報システム協議会への参加報告(資料 1
 根上常任理事より、本年23日・4日の両日、日本医師会館において開催された日本医師会医療情報システム協議会について詳細な報告があった。
 特に医療・介護連携においては、個人情報保護法のガイドライン上に「BYODbring your own device:個人持ち携帯機器による運用)の原則禁止」がうたわれたため、これまで BYODにより運用されていた医療介護連携をはじめとする医療連携の現場に問題が生じており、国によるこの点の緩和が必要ではないかとの見解が示された。

2.第8回横浜市ICTを活用した地域医療連携ネットワーク研究会報告(資料 2
 根上常任理事より、本年227日、資料の通り第8回横浜市ICTを活用した地域医療連携ネットワーク研究会が開催された旨報告された。今回のトピックスは、322日付のメディファクスにも掲載された「横浜市ICTを活用した地域医療連携ネットワークガイドライン」が策定されたことである。

3.日医特定健康診査システムの提供中止について(資料 3
 本件は、既に各区医師会に通知済みの案件。
 現在ORCAプロジェクトより無償で公開されている「日医特定健康診査システム」の提供を3月末で中止する旨の通知。なお、4月以降は、国立保健医療科学院から、これに代わるフリーソフトが提供されることから問題は生じない。

4.平成30年度日本医師会医療情報システム協議会の日程変更について(資料 4
 日本医師会医療情報システム協議会は年々参加者が増加しており、今年は参加をお断りした先生がいることから、来年は別会場とし平成3132日・3日に開催日を変更する旨の通知。なお、会場は文京シビックホールで調整中とのこと。

5.平成30年度情報システム事業部会事業計画案の修正について(資料5
 今年度より、従来の羅列式ではなく、日本医師会にならった形に変更することとなり、資料の通り変更した旨報告され、部員一同の了承が得られた。

6.医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(資料6)
 根上常任理事より、17ページ下段の③公衆衛生の向上又は児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難である時の項目の(例)に、次の通り記されていることが報告された。なお、このガイダンスは各区医師会へ郵送済み。
 「がん検診の制度管理のための地方公共団体又は地方公共団体から委託を受けた検診機関に対する精密検査結果の情報提供」

7.その他

 ○平成29年度区医師会IT研修経費補助事業の申請は平成30410()まで
申請のあった区:旭区・港南区・中区・金沢区・神奈川区・都筑区・瀬谷区
申請しない区:西区・磯子区・栄区・鶴見区

次回開催予定
    平成30529日(火)午後730分~   会場:横浜市医師会大会議室
注)第4火曜日に医学研修の日が開催されるため、第5火曜日開催

(資料1)
.改正個人情報保護法の医療現場への影響について-特に医療・介護連携において
指定発言  目々澤 肇 東京都医師会理事
 今回の個人情報保護法改正はガイドライン上に「BYOD(個人持ち携帯機器による運用の原則禁止」がうたわれたことにより、これまでBYOD により運用されていた医療介護連携をはじめとする医師間連携の現場には深刻な影響が発生している。これらの連携において、BYOD の利用率がかなり高いことは、昨年の東京都医師会の調査や2016 年の日医総研ワーキングペーパーでも明らかにされている。
 確かに、スマホで入力された記録や写真からは個人の特定が可能となり、もしもの場合には患者個人情報の漏洩という危険度がある。とはいえ、最近のスマートフォンでは「Sandbox」という仕組みでアプリケーション間のメモリリークの可能性は減弱しており、さらに医療に特化した非公開型SNS であれば十分な防御がなされている。また、メールを介したウイルスによる被害はBYOD であろうと仮にMDM(企業などで社員に支給する携帯情報端末の設定を管理するシステム)で管理された業務用端末であろうと全く変わりない。
 BYOD 原則禁止の方針は2025 年問題に対しICT を用いて少しでも現場の負担を軽くしよう、という当初の本質・趣旨に反するものではないか。この制限により、せっかく普及しかけている非公開型SNS による安全な連携が崩れ、決して安全とは言えないLINE Facebook などの公開型SNS の利用へと逆行してしまうという現象を引き起こすことを懸念する。

(資料2)


(資料3)

(資料4)


(資料5)
平成30 年度 情報システム事業部事業計画(案)
日々進歩する情報システムを幅広く調査・研究し、会員や各区医師会事務局の業務の効率化に役立つ情報システムの導入が適正に行なえるようにし、それに伴う必要な勉強会を企画立案する。今後使用用途が増えることが期待される日本医師会電子認証センター発行の「医師資格証」の普及に努める。横浜市 ICTを活用した地域医療連携ネットワーク研究会では、医療、介護などの多職種連携のツールとしてのICT 活用、病診連携のツールとしてのICT 活用、医療等IDを用いた個人健康情報管理体制の整備などについて研究しており、その成果について本会においても検証し、会員のニーズに合うよう意見具申する。個人情報保護法改正に関する研究を行い、要点を会員に周知して行く。

(資料6)