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2014年11月20日木曜日

神奈川県内科医学会 肝炎対策委員会 新委員長挨拶

新委員長挨拶 岡 正直

 このたび肝炎対策委員長に就任いたしました。前々委員長の多羅尾先生、前委員長の宮本先生のご尽力により当会の活動は着実に充実してまいりました。私の学術Ⅰ部会長との兼務のため十分な仕事ができないことを危惧しておりましたが、同時に永井一毅先生の副委員長ご就任によりお力をいただきまして、今後多くの皆様のお助けを頂戴しながら職務を遂行してまいりたいと存じます。会の活動内容については別項「事業委員会報告」を参照ください。
 さて、わが国のがん死亡第4位の肝臓がんの原因の70%を占めるC型肝炎の治療は、近年飛躍的な進歩を遂げ、最新のインターフェロン療法で90%、2014年秋に登場の経口剤のみの療法で85%の治癒率を達成し、さらに2015年以降次々と新薬の発売が予定されています。一方、肝炎患者の高齢化は非常に進んでおり、65歳を超えると発がんリスクが高まるため、治療に手をこまねいている時間はほとんどありません。激変する肝炎治療の新情報をすばやく、わかりやすく、より多くの治療者にお伝えするための、当委員会独自の視点を盛り込んだ講演会や小冊子をタイムリーに企画していきたいと考えております。
 肝炎治療の進歩にもかかわらず、多くの潜在する肝炎患者が治療者のもとに届いていない現実があります。わが国においておよそC型で100万人超、B型で90万人もの自らの感染に気づいていない人がいるといわれております。自治体で行われている肝炎ウイルス検診の受診率も26.2%と低迷し、肝炎ウイルス陽性の結果を知った人であっても病院を受診する人は66.2%に留まっているとのデータにとても残念な思いがいたします。世間一般では「肝臓病はお酒の飲みすぎ」との認識が支配的で、慢性ウイルス性肝炎に対しても自覚症状乏しく、「痛くない、辛くない」病気で、また一昔前の「治らない」病気という思い込みから、致命的な末期状態まで放置されがちです。肝炎治療の進歩を背景に、うかつに医療機関に他疾患で通院中の肝炎患者を看過していると、今後医事紛争に巻き込まれる事態も想定されます。このような潜在する肝炎患者の掘り起こしのため、当委員会では永井副委員長を中心に、横浜地区で肝臓病を専門としない先生でもすぐに実践可能なできる限り簡便な病診連携ガイドを作成し普及させる取り組みを始めています。また、一般人への啓発のため、市民団体と連携しながら、市民公開講座なども企画していきたいと考えています。
 着実な治療の進歩があるB型肝炎ですが、いまだ多くの診療上の困難が残されています。今後急増が確実とみられる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とNASH肝がんへの対策もゆるがせにできない大きな課題です。これらについても継続的にしっかり対応していきたいと思います。
 今後とも肝炎対策委員会の活動にご支援をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

2014年11月15日土曜日

学会の動き(神奈川県内科医学会の動向)神内医ニュース73号

学会の動き(神奈川県内科医学会の動向)神内医ニュース73号 学術1部会部会長 岡 正直

 神奈川県内科医学会学術1部会が企画担当している講演会は、定時総会時学術講演会、臨床医学研修講座、新春学術講演会そして集談会の4つです。

【第39回臨床医学研修講座報告】
 第39回臨床医学研修講座は、平成26年11月1日(土)15時より北里大学病院本館3F臨床講義室No.1&2にて第5地区相模原市内科医会の協力、北里大学医学部の主管にて開催されました。
 北里大学医学部医学部長 東原正明先生、神奈川県内科医学会会長 中佳一先生の開会の挨拶に続いて、4つのご講演をいただきました。ご講演の内容を簡単に紹介いたします。
(1)「北里新病院の体制と医師会等の連携」
 演者 北里大学医学部 医療安全・管理学教授 渋谷明隆先生
 まずは新病院紹介のビデオ供覧。2005年に新病院のプロジェクトを立ち上げ、2014年5月7日新病院が完成した。北里大学病院の役割は、地域における高度先進医療に加えて市民病院的役割を担うこと、そして地域への医療人材供給である。その特徴は4つ。①救命救急・災害医療センター:神奈川県北西部の3次救急を担う唯一の医療機関、②集学的がん診療センター:後述、③トータルサポートセンター:患者中心の医療を実現する病診連携の窓口、④周産母子成育医療センター:一連の妊娠・分娩から成育医療まで総合的に提供し、周産期救急、新生児・未熟児搬送の地域基盤となる。また2015年5月には、北里大学東病院はポスト急性期医療と地域をつなぐ地域医療貢献を実現すべく新しく生まれ変わる予定である。
(2)「集学的がん診療センターの運用と連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 臨床腫瘍学教授 佐々木冶一郎先生
 2007年施行の「がん対策推進基本計画」により、地域がん診療連携拠点病院は腫瘍センター、院内がん登録、外来化学療法、相談支援センターなど種々の要件を満たす必要があり、これらの業務を担う集学的がん診療センターを設けた。揮発性の抗がん剤への職員の曝露を避けるため、特殊な排気システムを完備した。また投与後48時間以内の患者の尿には抗がん剤が排出されているので注意すること。地域におけるがん診療連携は重要であり、成功している熊本県の「私のカルテ」に倣い、神奈川県のがん診療連携パスを作成している。がん診療連携をさらに推進するため、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビゲータの育成をすすめていきたい。
(3)「早期胃癌に対する内視鏡治療と地域連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 先端医療領域開発部門 低侵襲光学治療学教授 田邉聡先生
 内視鏡治療はESD(Endoscopic Submucosal Dissection;内視鏡的粘膜下層剥離術)が主流となり、北里大学は全国第9位の症例数を持つ。適応はリンパ節転移がなく、内視鏡治療で切除が可能なものだが、適応は拡大されつつあり、また適応外の症例も経験している。当院での治癒切除率は95.7%に達している。ESDの弱点は病巣の牽引手段がないことだが、2本の内視鏡を使う「ダブルスコープESD」により解決した。県内をはじめ近隣地域からの紹介が8割を占めている。ピロリ菌除菌後も発癌リスク低下は限定的であり、異時多発にも注意したい。内視鏡生検でgroup2,3,4の場合はぜひ紹介して欲しい。新病院の内視鏡センターは全国有数の広さと設備を誇り、内視鏡検診にも対応している。
(4)「健康科学センターでの人間ドックと地域連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 健康科学分野准教授 小林清典先生
 北里大学のドックの特徴は、①任意型健診主体で②中高齢者比率高く③全身合併症を有する受診者多く④リピータ率高く⑤日本総合健診医学会優良施設認定、である。要精検率が高いのは、受診者の年齢が他施設に比し高いことと、ピロリ菌除菌適応拡大に伴い、萎縮性胃炎を認めた場合要精査としているためである。大腸がん検診の陽性率は早期大腸がんでは50%に過ぎない。大腸がん検診結果が陽性であっても精検受診率は60%と低いことは問題であり、受診勧奨が重要である。2015年5月に北里大学東病院に健康科学センター(健診専用施設)がオープンし、さらに内容が充実する予定である。[終]
 講演終了後、3つのグループに分かれ院内見学を体験しました。どのフロアも清潔な広々とした空間のなかに、最先端の設備と豪華ホテルも顔負けの高級感があふれ、近未来の病院とはこういうものかと驚きの声があがりました。本館6階のレストラン「クルール」にて、北里大学医学部 消化器内科学教授 小泉和三郎先生と神奈川県内科医学会 第五地区副会長 山本晴章先生の挨拶に引き続き、情報交換会が行われ、盛会の内に終了いたしました。

【平成27年新春学術講演会予告】
 平成27年新春学術講演会が平成27年1月15日木曜日19時25分から21時15分に横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ5階「日輪」にて開催されます。今回は糖尿病対策委員会の松葉育郎委員長の企画により、「新規糖尿病治療薬への期待と課題」のテーマのもと、2つの講演が行われる予定です。
 まず19時45分より基調講演として「神奈川県内科医学会糖尿病対策委員会におけるSGLT2阻害剤の臨床効果の検討」を朝日内科クリニック院長 飯塚孝先生に御講演いただいた後、20時15分より特別講演「糖尿病治療の近未来~新しい治療薬への期待~」を草津総合病院理事長 柏木厚典先生に御講演いただく予定です。
 新春学術講演会は2つの講演が互いに関係する分野の話となるよう企画され、テーマの内容について深く掘り下げた理解が得られるまたとない絶好のチャンスです。

【第78回集談会予告】
 第78回神奈川県内科医学会集談会が平成27年2月14日(土)に横須賀市医師会館(最寄り駅 京急横須賀中央駅)にて横須賀内科医会の担当にて開催されます。午後3時から一般演題、午後5時10分より特別講演、午後6時より意見交換会が行われる予定です。多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。

【平成27年度定時総会時学術講演会予告】
 平成27年度定時総会は、平成27年5月16日(土)神奈川県総合医療会館7階講堂にて開催され、引き続き学術講演会が行われる予定です。今回のテーマは「日本の医療史(医療の原点から現代まで、さらに今後の医療の展望)」ということで、日本医史学会理事長、順天堂大学名誉教授 酒井シヅ先生に御講演いただく予定です。医療における転換点をむかえつつある現在、大所高所より大きな流れを俯瞰しながら、今後の医療のあり方を見定める講演会となればと期待しています。多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。

【おわりに】
  学術Ⅰ委員会は平成22年度まで部会長をされた伊藤正吾先生の後を引き継ぎ、平成23年度より新たな体制で活動を開始いたしました。平成27年も中佳一会長のご指導のもと、今までの長い歴史のある講演会に新たな変更や発展を加えながら、4つの基本講演会を開催していきたいと思います。今後とも、神奈川県内科医学会本体事業である学術1部会の講演会開催にご協力とご参加をお願い申し上げます。

2014年11月14日金曜日

神奈川県内科医学会 肝炎対策委員会 新委員長挨拶

神奈川県内科医学会 肝炎対策委員会 新委員長挨拶 岡 正直

 このたび肝炎対策委員長に就任いたしました。前々委員長の多羅尾先生、前委員長の宮本先生のご尽力により当会の活動は着実に充実してまいりました。私の学術Ⅰ部会長との兼務のため十分な仕事ができないことを危惧しておりましたが、同時に永井一毅先生の副委員長ご就任によりお力をいただきまして、今後多くの皆様のお助けを頂戴しながら職務を遂行してまいりたいと存じます。会の活動内容については別項「事業委員会報告」を参照ください。
 さて、わが国のがん死亡第4位の肝臓がんの原因の70%を占めるC型肝炎の治療は、近年飛躍的な進歩を遂げ、最新のインターフェロン療法で90%、2014年秋に登場の経口剤のみの療法で85%の治癒率を達成し、さらに2015年以降次々と新薬の発売が予定されています。一方、肝炎患者の高齢化は非常に進んでおり、65歳を超えると発がんリスクが高まるため、治療に手をこまねいている時間はほとんどありません。激変する肝炎治療の新情報をすばやく、わかりやすく、より多くの治療者にお伝えするための、当委員会独自の視点を盛り込んだ講演会や小冊子をタイムリーに企画していきたいと考えております。
 肝炎治療の進歩にもかかわらず、多くの潜在する肝炎患者が治療者のもとに届いていない現実があります。わが国においてC型で48万人、B型で30万人、合わせて約80万人の自らの感染に気づいていない人がいるといわれております。自治体で行われている肝炎ウイルス検診の受診率も26.2%と低迷し、肝炎ウイルス陽性の結果を知った人であっても病院を受診する人は66.2%に留まっているとのデータにとても残念な思いがいたします。世間一般では「肝臓病はお酒の飲みすぎ」との認識が支配的で、慢性ウイルス性肝炎に対しても「痛くない、辛くない」また一昔前の「治らない」病気という思い込みから、致命的な末期状態まで放置されがちです。肝炎治療の進歩を背景に、うかつに医療機関に他疾患で通院中の肝炎患者を看過していると、今後医事紛争に巻き込まれる事態も想定されます。このような潜在する肝炎患者の掘り起こしのため、当委員会では永井副委員長を中心に、横浜地区で肝臓病を専門としない先生でもすぐに実践可能なできる限り簡便な病診連携ガイドを作成し普及させる取り組みを始めています。また、一般人への啓発のため、市民団体と連携しながら、市民公開講座なども企画していきたいと考えています。
 着実な治療の進歩があるB型肝炎ですが、いまだ多くの診療上の困難が残されています。今後急増が確実とみられる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とNASH肝がんへの対策もゆるがせにできない大きな課題です。これらについても継続的にしっかり対応していきたいと思います。
 今後とも肝炎対策委員会の活動にご支援をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。

2014年11月12日水曜日

事業委員会報告(肝炎対策委員会) 神内ニュース73号

事業委員会報告(肝炎対策委員会)  岡 正直

 肝炎対策委員会の事業および今後の計画を以下に記します。

(1)肝炎対策特別委員会
 C型肝炎に対する新規治療(特に経口剤のみによる治療)が平成26年から27年にかけて次々と登場し、肝臓病専門医以外や一般開業医にも治療の窓口が広がろうとしています。
この機会に一般の先生方に最新の正しい肝炎と肝炎治療の知識をお届けする講演会を、平成27年2月から3月にかけて企画しています。

(2)肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~
 平成26年10月18日に新横浜プリンスホテルで第21回の講演会が、第1地区の筆者の担当で開催されました。特別発言「医事紛争となった肝疾患事例」の紹介に始まり、2つの一般演題(最新の肝がん治療とサルコイドーシスに伴う肝障害症例)に続き、特別講演「新しい時代を迎えたC型慢性肝炎治療」を京都府立医科大学 伊藤義人教授にご講演いただきました。47名の参加者と共に活発な討論がなされました。
 第22回は第2地区小林明文先生のお世話により、平成27年6月27日に中原区休日診療所または川崎日航ホテルにて開催の予定です。

(3)ウイルス肝炎患者掘り起こし事業
 横浜内科学会の永井一毅先生の主導により、非肝臓病専門医のもとで、気づかれないまま放置されている肝疾患患者の掘り起こしのため、できる限り簡便な病診連携ガイドを作成し普及させる試みが進んでいます。
 また、肝炎患者の市民団体と連携をとりつつ、市民公開講座を企画したいと思います。

(4)小冊子「これだけは知っておきたいC型肝炎・B型肝炎の知識」
 平成25年改訂版のあと、シメプレビル3剤併用や経口2剤によるウイルス肝炎治療の登場など大きな進歩があり、各委員の分担執筆により、平成27年前半をめどに最新の内容に改定を行いたいと思います。

2014年11月10日月曜日

お知らせ(平成27年度定時総会時学術講演会)

お知らせ(定時総会時学術講演会)

平成27年5月16日(土)神奈川県総合医療会館7階講堂にて開催の平成27年度定時総会に引き続き学術講演会が行われる予定です。今回のテーマは「日本の医療史(医療の原点から現代まで、さらに今後の医療の展望)」ということで、日本医史学会理事長、順天堂大学名誉教授 酒井シヅ先生に御講演いただく予定です。
 「医史学」とはどのような学問なのでしょうか?順天堂大学大学院のウェブサイトからの引用を参考にしてみたいと思います。
「医療職はもっとも古くから存在した専門職のひとつであり、順天堂大学医学部は文字通り現代最先端の医学・医療の各分野を代表する専門家たちから構成されています。医史学・医の人間学は、この医の専門家集団の中にあって、医という人間の営みを、狭い専門分野に囚われない広い視野と自由な発想をもち、そして同時に、可能な限り冷静かつ旺盛な批判力をもって、遺された歴史資料の語りかけてくる言葉を聞き分け、歴史の流れの中に客観的に位置づけ、現代の医療に積極的な提言を行っていくことを、その使命としています。」
 酒井先生は、数多くの著書とともに、NHK大河ドラマ「花神」「獅子の時代」と、漫画「JIN仁」及びそのドラマ化作品では医学考証を担当されており、多くの興味深いエピソードをお話いただけるものと期待しております。
 医療における転換点をむかえつつある現在、大所高所より大きな流れを俯瞰しながら、今後の医療のあり方を見定める講演会となればと期待しています。お誘いあわせの上、多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。

2014年11月9日日曜日

第39回臨床医学研修講座(北里大学病院) 平成26年11月1日

【第39回臨床医学研修講座報告】

 第39回臨床医学研修講座は、平成26年11月1日(土)15時より北里大学病院本館3F臨床講義室No.1&2にて第5地区相模原市内科医会の協力、北里大学医学部の主管にて開催されました。
 北里大学医学部医学部長 東原正明先生、神奈川県内科医学会会長 中佳一先生の開会の挨拶に続いて、4つのご講演をいただきました。ご講演の内容を簡単に紹介いたします。

(1)「北里新病院の体制と医師会等の連携」
 演者 北里大学医学部 医療安全・管理学教授 渋谷明隆先生
 まずは新病院紹介のビデオ供覧。2005年に新病院のプロジェクトを立ち上げ、2014年5月7日新病院が完成した。北里大学病院の役割は、地域における高度先進医療に加えて市民病院的役割を担うこと、そして地域への医療人材供給である。その特徴は4つ。①救命救急・災害医療センター:神奈川県北西部の3次救急を担う唯一の医療機関、②集学的がん診療センター:後述、③トータルサポートセンター:患者中心の医療を実現する病診連携の窓口、④周産母子成育医療センター:一連の妊娠・分娩から成育医療まで総合的に提供し、周産期救急、新生児・未熟児搬送の地域基盤となる。また2015年5月には、北里大学東病院はポスト急性期医療と地域をつなぐ地域医療貢献を実現すべく新しく生まれ変わる予定である。

(2)「集学的がん診療センターの運用と連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 臨床腫瘍学教授 佐々木冶一郎先生
 2007年施行の「がん対策推進基本計画」により、地域がん診療連携拠点病院は腫瘍センター、院内がん登録、外来化学療法、相談支援センターなど種々の要件を満たす必要があり、これらの業務を担う集学的がん診療センターを設けた。揮発性の抗がん剤への職員の曝露を避けるため、特殊な排気システムを完備した。また投与後48時間以内の患者の尿には抗がん剤が排出されているので注意すること。地域におけるがん診療連携は重要であり、成功している熊本県の「私のカルテ」に倣い、神奈川県のがん診療連携パスを作成している。がん診療連携をさらに推進するため、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビゲータの育成をすすめていきたい。

(3)「早期胃癌に対する内視鏡治療と地域連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 先端医療領域開発部門 低侵襲光学治療学教授 田邉聡先生
 内視鏡治療はESD(Endoscopic Submucosal Dissection;内視鏡的粘膜下層剥離術)が主流となり、北里大学は全国第9位の症例数を持つ。適応はリンパ節転移がなく、内視鏡治療で切除が可能なものだが、適応は拡大されつつあり、また適応外の症例も経験している。当院での治癒切除率は95.7%に達している。ESDの弱点は病巣の牽引手段がないことだが、2本の内視鏡を使う「ダブルスコープESD」により解決した。県内をはじめ近隣地域からの紹介が8割を占めている。ピロリ菌除菌後も発癌リスク低下は限定的であり、異時多発にも注意したい。内視鏡生検でgroup2,3,4の場合はぜひ紹介して欲しい。新病院の内視鏡センターは全国有数の広さと設備を誇り、内視鏡検診にも対応している。

(4)「健康科学センターでの人間ドックと地域連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 健康科学分野准教授 小林清典先生
 北里大学のドックの特徴は、①任意型健診主体で②中高齢者比率高く③全身合併症を有する受診者多く④リピータ率高く⑤日本総合健診医学会優良施設認定、である。要精検率が高いのは、受診者の年齢が他施設に比し高いことと、ピロリ菌除菌適応拡大に伴い、萎縮性胃炎を認めた場合要精査としているためである。大腸がん検診の陽性率は早期大腸がんでは50%に過ぎない。大腸がん検診結果が陽性であっても精検受診率は60%と低いことは問題であり、受診勧奨が重要である。2015年5月に北里大学東病院に健康科学センター(健診専用施設)がオープンし、さらに内容が充実する予定である。[終]

 講演終了後、3つのグループに分かれ院内見学を体験しました。どのフロアも清潔な広々とした空間のなかに、最先端の設備と豪華ホテルも顔負けの高級感があふれ、近未来の病院とはこういうものかと驚きの声があがりました。本館6階のレストラン「クルール」にて、北里大学医学部 消化器内科学教授 小泉和三郎先生と第五地区 山本晴章副会長の挨拶に引き続き、情報交換会が行われ、盛会の内に終了いたしました。

学会の動き(神奈川県内科医学会の動向)神内医ニュース73号

学会の動き(神奈川県内科医学会の動向)神内医ニュース73号 学術1部会部会長 岡 正直

 神奈川県内科医学会学術1部会が企画担当している講演会は、定時総会時学術講演会、臨床医学研修講座、新春学術講演会そして集談会の4つです。

【第39回臨床医学研修講座報告】
 第39回臨床医学研修講座は、平成26年11月1日(土)15時より北里大学病院本館3F臨床講義室No.1&2にて第5地区相模原市内科医会の協力、北里大学医学部の主管にて開催されました。
 北里大学医学部医学部長 東原正明先生、神奈川県内科医学会会長 中佳一先生の開会の挨拶に続いて、4つのご講演をいただきました。ご講演の内容を簡単に紹介いたします。
(1)「北里新病院の体制と医師会等の連携」
 演者 北里大学医学部 医療安全・管理学教授 渋谷明隆先生
 まずは新病院紹介のビデオ供覧。2005年に新病院のプロジェクトを立ち上げ、2014年5月7日新病院が完成した。北里大学病院の役割は、地域における高度先進医療に加えて市民病院的役割を担うこと、そして地域への医療人材供給である。その特徴は4つ。①救命救急・災害医療センター:神奈川県北西部の3次救急を担う唯一の医療機関、②集学的がん診療センター:後述、③トータルサポートセンター:患者中心の医療を実現する病診連携の窓口、④周産母子成育医療センター:一連の妊娠・分娩から成育医療まで総合的に提供し、周産期救急、新生児・未熟児搬送の地域基盤となる。また2015年5月には、北里大学東病院はポスト急性期医療と地域をつなぐ地域医療貢献を実現すべく新しく生まれ変わる予定である。
(2)「集学的がん診療センターの運用と連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 臨床腫瘍学教授 佐々木冶一郎先生
 2007年施行の「がん対策推進基本計画」により、地域がん診療連携拠点病院は腫瘍センター、院内がん登録、外来化学療法、相談支援センターなど種々の要件を満たす必要があり、これらの業務を担う集学的がん診療センターを設けた。揮発性の抗がん剤への職員の曝露を避けるため、特殊な排気システムを完備した。また投与後48時間以内の患者の尿には抗がん剤が排出されているので注意すること。地域におけるがん診療連携は重要であり、成功している熊本県の「私のカルテ」に倣い、神奈川県のがん診療連携パスを作成している。がん診療連携をさらに推進するため、日本癌治療学会認定がん医療ネットワークナビゲータの育成をすすめていきたい。
(3)「早期胃癌に対する内視鏡治療と地域連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 先端医療領域開発部門 低侵襲光学治療学教授 田邉聡先生
 内視鏡治療はESD(Endoscopic Submucosal Dissection;内視鏡的粘膜下層剥離術)が主流となり、北里大学は全国第9位の症例数を持つ。適応はリンパ節転移がなく、内視鏡治療で切除が可能なものだが、適応は拡大されつつあり、また適応外の症例も経験している。当院での治癒切除率は95.7%に達している。ESDの弱点は病巣の牽引手段がないことだが、2本の内視鏡を使う「ダブルスコープESD」により解決した。県内をはじめ近隣地域からの紹介が8割を占めている。ピロリ菌除菌後も発癌リスク低下は限定的であり、異時多発にも注意したい。内視鏡生検でgroup2,3,4の場合はぜひ紹介して欲しい。新病院の内視鏡センターは全国有数の広さと設備を誇り、内視鏡検診にも対応している。
(4)「健康科学センターでの人間ドックと地域連携」
 演者 北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 健康科学分野准教授 小林清典先生
 北里大学のドックの特徴は、①任意型健診主体で②中高齢者比率高く③全身合併症を有する受診者多く④リピータ率高く⑤日本総合健診医学会優良施設認定、である。要精検率が高いのは、受診者の年齢が他施設に比し高いことと、ピロリ菌除菌適応拡大に伴い、萎縮性胃炎を認めた場合要精査としているためである。大腸がん検診の陽性率は早期大腸がんでは50%に過ぎない。大腸がん検診結果が陽性であっても精検受診率は60%と低いことは問題であり、受診勧奨が重要である。2015年5月に北里大学東病院に健康科学センター(健診専用施設)がオープンし、さらに内容が充実する予定である。[終]
 講演終了後、3つのグループに分かれ院内見学を体験しました。どのフロアも清潔な広々とした空間のなかに、最先端の設備と豪華ホテルも顔負けの高級感があふれ、近未来の病院とはこういうものかと驚きの声があがりました。本館6階のレストラン「クルール」にて、北里大学医学部 消化器内科学教授 小泉和三郎先生と第五地区 山本晴章副会長の挨拶に引き続き、情報交換会が行われ、盛会の内に終了いたしました。

【平成27年新春学術講演会予告】
 平成27年新春学術講演会が平成27年1月15日木曜日19時30分から21時15分に横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ5階「日輪」にて開催されます。今回は糖尿病対策委員会の松葉育郎委員長の企画により、「新規糖尿病治療薬への期待と課題」のテーマのもと、2つの講演が行われる予定です。
 まず基調講演としてASSING-K関連演題を朝日内科クリニック院長 飯塚孝先生に御講演いただいた後、特別講演を草津総合病院理事長 柏木厚典先生に御講演いただく予定です。
 新春学術講演会は2つの講演が互いに関係する分野の話となるよう企画され、テーマの内容について深く掘り下げた理解が得られるまたとない絶好のチャンスです。

【第78回集談会予告】
 第78回神奈川県内科医学会集談会が平成27年2月14日(土)に横須賀市医師会館(最寄り駅 京急横須賀中央駅)にて横須賀内科医会の担当にて開催されます。午後3時から一般演題、午後5時10分より特別講演、午後6時より意見交換会が行われる予定です。多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。

【平成27年度定時総会時学術講演会予告】
 平成27年度定時総会は、平成27年5月16日(土)神奈川県総合医療会館7階講堂にて開催され、引き続き学術講演会が行われる予定です。今回のテーマは「日本の医療史(医療の原点から現代まで、さらに今後の医療の展望)」ということで、日本医史学会理事長、順天堂大学名誉教授 酒井シヅ先生に御講演いただく予定です。医療における転換点をむかえつつある現在、大所高所より大きな流れを俯瞰しながら、今後の医療のあり方を見定める講演会となればと期待しています。多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。

【おわりに】
  学術Ⅰ委員会は平成22年度まで部会長をされた伊藤正吾先生の後を引き継ぎ、平成23年度より新たな体制で活動を開始いたしました。平成27年も中佳一会長のご指導のもと、今までの長い歴史のある講演会に新たな変更や発展を加えながら、4つの基本講演会を開催していきたいと思います。今後とも、神奈川県内科医学会本体事業である学術1部会の講演会開催にご協力とご参加をお願い申し上げます。

学会の動き(神奈川県内科医学会の動向)神内医ニュース73号

学会の動き(神奈川県内科医学会の動向)神内医ニュース73号 学術1部会部会長 岡 正直

 神奈川県内科医学会学術1部会が企画担当している講演会は、定時総会時学術講演会、臨床医学研修講座、新春学術講演会そして集談会の4つです。

【第39回臨床医学研修講座報告】
 第39回臨床医学研修講座は、平成26年11月1日(土)15時より北里大学病院にて第5地区相模原市内科医会の協力、北里大学医学部の主管にて開催されました。

【平成27年新春学術講演会予告】
 平成27年新春学術講演会が平成27年1月15日木曜日19時30分から21時15分に横浜ベイシェラトンホテル&タワーズ5階「日輪」にて開催されます。今回は糖尿病対策委員会の松葉育郎委員長の企画により、「新規糖尿病治療薬への期待と課題」のテーマのもと、2つの講演が行われる予定です。
 まず基調講演としてASSING-K関連演題を朝日内科クリニック院長 飯塚孝先生に御講演いただいた後、特別講演を草津総合病院理事長 柏木厚典先生に御講演いただく予定です。
 新春学術講演会は2つの講演が互いに関係する分野の話となるよう企画され、テーマの内容について深く掘り下げた理解が得られるまたとない絶好のチャンスです。

【第78回集談会予告】
 第78回神奈川県内科医学会集談会が平成27年2月14日(土)に横須賀市医師会館(最寄り駅 京急横須賀中央駅)にて横須賀内科医会の担当にて開催されます。午後3時から一般演題、午後5時10分より特別講演、午後6時より意見交換会がもたれる予定です。多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。

【平成27年度定時総会時学術講演会予告】
 平成27年度定時総会は、平成27年5月16日(土)神奈川県総合医療会館7階講堂にて開催され、引き続き学術講演会が行われる予定です。今回のテーマは「日本の医療史(医療の原点から現代まで、さらに今後の医療の展望)」ということで、日本医史学会理事長、順天堂大学名誉教授 酒井シヅ先生に御講演いただく予定です。医療をめぐる大きな転換点にある現在、大所高所より大きな流れを俯瞰しながら、今後の医療のあり方を見定める講演会となればと期待しています。多くの先生方のご参加をお願い申し上げます。

【おわりに】
  学術Ⅰ委員会は平成22年度まで部会長をされた伊藤正吾先生の後を引き継ぎ、平成23年度より新たな体制で活動を開始いたしました。平成27年も中佳一会長のご指導のもと、今までの長い歴史のある講演会に新たな変更や発展を加えながら、4つの基本講演会を開催していきたいと思います。今後とも、神奈川県内科医学会本体事業である学術1部会の講演会開催にご協力とご参加をお願い申し上げます。

神奈川県内科医学会 第5回肝炎対策委員会 議事録 2014年11月6日


神奈川県内科医学会 5肝炎対策委員会
議事録
日時 平成26116日(木)1900
場所 神奈川県総合医療会館        

【議題】

1. 肝炎対策特別講演会

 平成272月から3月ごろに、虎の門病院の熊田先生を演者によび、
 経口2剤によるウイルス肝炎治療の知識と今後の展望をテーマに企画する。

2. 肝臓病を考える病診連携の会~肝がん撲滅を目指して~(資料1

   2-1. 21回の報告と反省
  平成261018日(土)17- 新横浜プリンスホテル4F「桜川」にて
  共催 ブリストル・マイヤーズ株式会社
  【開会挨拶】神奈川県内科医学会 会長 中  佳一 先生
  【顧問挨拶】たらお内科・消化器科 院長 多羅尾 和郎 先生
  【特別発言】「医事紛争となった肝疾患事例についての検討」
   小林内科医院 院長 小林 明文 先生
  【一般演題】座 長:神奈川県内科医学会肝炎対策委員長 岡  正直 先生
.「当院における肝細胞癌治療の現状」
   聖マリアンナ医科大学横浜市西部病院 消化器内科 講師 石井俊哉 先生
.「肺サルコイドーシスの経過観察中に肝障害増悪を認めた1例」
   横浜市立大学附属市民総合医療センター消化器病センター 竹田彩子 先生
  【特別講演】座 長:市民総合医療センター 消化器内科 教授 田中克明 先生
   「新しい時代を迎えたC型慢性肝炎治療」
   京都府立医科大学 消化器内科学 教授 伊藤 義人 先生
  【閉会挨拶】肝臓病を考える病診連携の会 代表世話人 宮本  京 先生
  出席者47名 おおむね好評であった。

   2-2. 22回の企画
  当番世話人 第二地区 小林明文先生、 共催 田辺三菱製薬 
  平成27627日(土) 候補1.中原区休日診療所 候補2.川崎日航ホテル

   2-3. 23回の企画
  当番世話人 第三地区 池田隆明先生、 共催 MSD株式会社 
  候補日 平成271024日(土)、117日(土)、1114日(土)
  横須賀セントラルホテル
  
    2-4.コメディカルの参加者を増やすために
  ・メーカーMRにより、薬局や薬剤師に案内状を配り参加呼びかけ
  ・講師に薬剤師の先生をよんではどうか
  (今後の経口2剤治療においては、服薬アドヒアランスが極めて重要になるため)

3. ウイルス肝炎患者掘り起こし事業

   3-1. 市民公開講座
  肝臓の会・神奈川などの市民団体とコンタクトをとりつつ、企画する。

   3-2. 横浜内科学会での取り組みの紹介
  「肝疾患管理病診連携ガイド作成へ向けて」
  横浜内科学会幹事 永井一毅、遠藤雄一、池田弘子(磯子区);岡 正直(港南区)
   非肝臓病専門医のもとで、気づかれないまま放置されている肝疾患患者の掘り起こし
  のため、できる限り簡便な病診連携ガイドを作成し普及させたい。
   その第一歩として行ったアンケート調査内容に付いて説明した。

  1)肝障害が軽度の場合、脂肪肝・アルコール性肝炎として管理されていることが多い。
  2)肝炎ウイルス検査を逸している症例が多い可能性がある。
  3)消化器・肝臓専門医だけでの対応は困難であり、各科医会を通じて肝炎対策を
   一層推進すべきと思われた。

4. 小冊子「これだけは知っておきたいC型肝炎・B肝炎知識」(資料2

   4-1.改訂版の企画
   平成25年改訂版のあと、シメプレビル3剤併用療法や経口2剤による
  ウイルス肝炎治療の登場など大きな進歩があり、最新の内容に改定する
  必要がある。各委員の分担執筆により、平成27年改訂版を来年前半を
  めどに発刊する。(第22回肝臓病を考える病診連携の会での配布をめざす)

5. その他


 次回開催 平成27年 2月 5日 または 26日(木) 19時 00