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2013年12月9日月曜日

日臨内ニュース 2014年1月1日号 関東甲信越・東京ブロック会議(神奈川県)報告

11月30日(土)ホテルキャメロットジャパン(担当 神奈川県)


 11月30日土曜日午後4時より、関東甲信越・東京ブロック会議が、神奈川県内科医学会(神内)の担当で横浜駅西口のホテルキャメロットジャパンにおいて開催された。日本臨床内科医会(日臨内)執行部から猿田会長、望月副会長、中副会長、山本常任理事、松本常任理事、清水常任理事、神津常任理事、菅原常任理事が出席。そして各県内科医会の会長および役員を加え総勢27名が参加した。
 神内の中会長の開会挨拶に続き、日臨内の猿田会長の挨拶があり、望月副会長より日臨内の現況報告が行われた。また社会保険部医療・介護保険担当清水常任理事より医療保険最新情報、日臨内活動報告、「患者紹介ビジネス」についての注意喚起があった。中副会長から学術部、会誌編集委員会、広報部についての報告に続いて、菅原常任理事より原発性アルドステロン症実態調査とスマイルスタディなどの説明があり、中副会長および山本常任理事より第31回日臨内総会についての説明も行われた。
 その後、事前に行われたアンケート(学術・社会公益活動報告、会員増強・会費、情報化、混合診療、日臨内役員選出規定、日臨内活動評価、日臨内への要望)に基づいて、各県からの発言が順次なされた。栃木県中山会長「日臨内の内保連での活動を会員に周知して欲しい」群馬県大竹副会長「講演会を多数行っている。会員増強の支援が欲しい」埼玉県嶋津副会長「会員増により保険行政への発言力を」千葉県徳政運営委員会副委員長・吉田代議員「日臨内活動のoutcomeの広報が足りない」東京都菅原会長「東京都各科医会協議会の冊子の配布は会員増強に役立つ。日臨内役員選出は現在の方法が適切」長野県野口会長「日常診療に役立つ保険診療の情報を」神奈川県宮川副会長・武田常任幹事「多くの事業委員会が活発に活動。会長が県内を回り会員増強の呼びかけを行っている」
 質疑応答のあと、猿田会長より「高度先進医療を保険収載すべく努力している」とのコメントがあった。最後に来年度の会議は埼玉県が担当することが確認され、午後6時過ぎ閉会となった。今後の日臨内の進むべき方向に光を投げかける充実した会議であった。(記 岡 正直)

日臨内ニュース 2014年1月1日号 「万華鏡」

 厚生労働省は2011年10月「専門医の在り方に関する検討会」を立ち上げ専門医の質を高める議論を始めた。2013年4月には最終的な報告書を公表し、新たな専門医の仕組みを構築する方向に一歩を踏み出した。注目すべき点は、現在日本専門医制度評価・認定機構が認定している18の基本領域の専門医に、新たに19番目の基本領域の専門医として、総合的な診療能力を持つ「総合診療専門医」を加えたことである。
 去る1985年に旧厚生省により組織された「家庭医に関する懇談会」により提唱された「家庭医制度」は、日本医師会の「開業医療に対する国家統制」で「安価で質の悪い医療」の国民への押し付けではないかとの主張により日の目をみることはなかった。その後「家庭医」の名称は「総合医」「かかりつけ医」「プライマリケア医」「総合診療医」と転々とするが、具体的なイメージはつかみにくいものであった。というのも、わが国には国際標準の呼称である「家庭医療学(family medicine)」の専門家はほとんどおらず、これを教育しトレーニングする場も不足しているからである。わが国が多くの先進医療の範を仰いでいる米国も、家庭医療学に関しては後進国であり、一方先進国は、英国、オランダ、カナダ、オーストラリアなどである。また家庭医療学は独立した専門領域で、その習得には相応のトレーニングが必要である。
 フリーアクセスは日本の医療システムの長所と思われるが、カナダで家庭医療の専門研修を修了した日本では数少ない「専門医」である葛西龍樹氏はフリーアクセスの短所をあえて指摘する。フリーアクセスにより、よく分かる患者は自らの治療にふさわしい診療科を受診できるが、よく分からない患者は不適切な診療科を受診する可能性が高い。また多くの患者は病気の専門家ではないので、フリーアクセスにより次々と不適切な受診(大病院志向など)をしたり、その結果としてたらい回しされたりして、患者不満が高まり、医師は疲弊し、医療資源や医療費の無駄使いが積み重なり医療崩壊を招いているという。
 一方、家庭医がプライマリケア領域の疾患をワンストップで診療し、プライマリケア領域を超える部分について適切なゲートキーパ機能を発揮することによって、先述の家庭医療先進国では費用対効果の高い効率的な医療システムを実現しつつあり、何より国民の家庭医に対する満足度が高いということである。日本と同じくフリーアクセスのシステムを持つオーストラリアでは、家庭医についても患者は選択の自由があるが、よく訓練された家庭医を自然に利用するようになるという。また家庭医がゲートキーパとして機能することにより、各科専門医のもとには自分が診るべき患者のみが受診するようになり、高度な専門医療を行う施設や専門医の診療環境も大きく改善される結果となる。
 中央社会保険医療協議会(中医協)による外来医療見直しの大きなテーマのひとつに「かかりつけ医機能の強化」があげられており、今後出来高報酬によらない診療報酬体系の新設があるかもしれず、今後の動向から目が離せない。来たる平成26年4月13日に東京商工会議所にて第31回日本臨床内科医会総会が開催され、その特別講演で日本専門医評価・認定機構理事長 池田康夫先生より「総合診療専門医」についてのご講演をいただけることになっており、今から楽しみである。

神内医ニュース71号 この一冊 「医療大転換」葛西龍樹(ちくま新書)

「医療大転換」葛西龍樹(ちくま新書)


 厚生労働省は2011年10月「専門医の在り方に関する検討会」を立ち上げ、専門医の質を高めるための議論を始めた。2013年4月には最終的な報告書を公表し、新たな専門医の仕組みを構築する方向に一歩を踏み出した。注目すべき点は、現在日本専門医制度評価・認定機構が認定している18の基本領域の専門医に、新たに19番目の基本領域の専門医として、総合的な診療能力を持つ「総合診療専門医」を加えたことである。
 去る1985年に旧厚生省により組織された「家庭医に関する懇談会」により提唱された「家庭医制度」は、日本医師会の「開業医療に対する国家統制」で「安価で質の悪い医療」の国民への押し付けではないかとの主張により日の目をみることはなかった。その後「家庭医」の名称は「総合医」「かかりつけ医」「プライマリケア医」「総合診療医」と転々とするが、具体的なイメージはつかみにくいものであった。というのも、わが国には国際標準の呼称である「家庭医療学(family medicine)」の専門家はほとんどおらず、わが国が多くの先進医療の範を仰いでいる米国も、家庭医療学に関しては後進国といわざるを得ないからだ。家庭医療学の先進国は、英国、オランダ、カナダ、オーストラリアなどであり、著者はカナダで家庭医療の専門研修を修了した、日本では数少ないこの分野の「専門医」である。
 フリーアクセスは日本の医療システムの長所と思われるが、著者はフリーアクセスの短所をいくつかの事例をあげて説明する。フリーアクセスにより、よく分かる患者は自らの治療にふさわしい診療科を受診することができるが、よく分からない患者は不適切な診療科を受診する可能性が高い。また多くの患者は病気の専門家ではないので、フリーアクセスにより次々と不適切な受診(大病院志向など)をしたり、その結果としてたらい回しされたりして、患者不満が高まり、医師は疲弊し、医療資源や医療費の無駄使いが積み重なって医療崩壊を招いているという。
 一方、家庭医がプライマリケア領域の疾患をワンストップで診療し、プライマリケア領域を超える部分について適切なゲートキーパ機能を発揮することによって、先に述べた家庭医療先進国では、費用対効果の高い効率的な医療システムを実現しつつあり、何より国民の家庭医に対する満足度が高いということである。日本と同じくフリーアクセスのシステムを持つオーストラリアでは、家庭医についても患者は選択の自由があるが、よく訓練された家庭医を自然に利用するようになるという。また家庭医がゲートキーパとして機能することにより、高度な専門医療を行う施設や専門医の診療環境も大きく改善される結果となる。
 著者が現在勤務(福島県立医大 地域・家庭医療学講座)する福島県を含む東北地方では、東日本大震災後に深刻な医療システムの崩壊にさらされていることはよく知られているが、もし家庭医によるプライマリケアのシステムが普及していれば防ぐことができた事例も多いのではないか、と著者は指摘する。「家庭医療学」は独立した専門領域であり、その習得には相応のトレーニングを必要とする。わが国における問題点は、家庭医療の専門家が非常に少なく、これを教育しトレーニングする場が決定的に不足していることである。
 来たる平成26年4月13日に東京商工会議所にて神奈川県内科医学会の主管により第31回日本臨床内科医会総会が開催され、その特別講演で日本専門医評価・認定機構理事長 池田康夫先生より「総合診療専門医」についてのご講演をいただけることになっており、今から楽しみである。