2013年4月20日土曜日

特定健診の5年間の評価と今後の方向性


第30回日本臨床内科医会総会 特別講演2
特定健診の5年間の評価と今後の方向性  自治医科大学学長 永井良三先生

 日本人の死因は感染症から非感染症(NCD:Non-Communicable Diseases)に変化してきた。NCDはほぼ生活習慣病と癌を含む概念であり、長期に治療を受け医療費がかさむ傾向があるため、健診予防が重視される。医療費は最近年間1.2兆円の割合で増え、2025年には65兆円に達する見込みである。手厚い医療により、確かに国民の平均寿命は延びているが、日常生活に制限のない暮らしを送ることができる健康寿命がそれに比例しているとはいえない。一方、健診の受診率の高い集団では、老人ひとり当たりの医療費が低い傾向があることが知られている。政府は昭和53年に「国民健康づくり対策」、昭和63年に「第2次国民健康づくり対策」、平成12年に「健康日本21」、そして平成25年より「健康日本21(第2次)」を政策に掲げ、平成19年に決まった「高齢者の医療の確保に関する法律施行令」に基づいて平成20年より始まった「特定健診・特定保健指導」は、法律により医療保険者に実施義務を課したことと、「メタボ健診」と呼ばれるように、高齢者医療確保法で規定された「内臓脂肪の蓄積に起因する」疾患に焦点を絞ったことが特徴的である。したがって、内臓肥満の指標としての腹囲計測は第一基準として重要であるが、その基準値の設定については今後検討の余地が残されている。先進国の中で同様の制度を導入している国はなく、世界的に成果が注目されている。
 過去5年間の特定健診・特定保健指導57万人のデータ解析により見えてきたものがある。40-60歳では狭心症や心筋梗塞のイベントが多い。男性は40歳で腹囲と体重のピークとなるが、HbA1cの値はその後も上昇が続く。一方女性は40歳を過ぎても腹囲と体重の増加とHbA1cの上昇も続く。非肥満であっても心血管脳血管障害のリスクのある人は存在する。リスク要因が少なくても安心はできない。心血管脳血管障害発症の数年前より検査値の変動が大きくなる傾向が見られた。特定保健指導で情報提供を行うなどの行動変容プログラムによって、50歳未満の若い人ほどメタボから非メタボとなる介入効果が高いことが分かった。当初低迷していた受診率も、平成23年には特定健診45%、特定保健指導16%に向上しているが、保険者別では市町村国保、国保組合、協会けんぽ、船員保険の受診率が依然低いことが問題である。
 今後の特定健診・特定保健指導は平成25年から始まる第2期医療費適正化計画とリンクしていくこととなる。「健康日本21(第2次)」では、健康寿命の延長、健康格差の縮小、生活習慣の改善、社会環境整備などが謳われている。それを受けて、新しい特定健診・特定保健指導では、疾患の重症化予防、非肥満者への配慮、情報提供による積極的支援、面接による支援の充実などが盛り込まれることになった。腹囲は、国際的にはメタボのいくつかの判定基準のひとつとして扱われることが多いとはいえ、今後も腹囲基準が重要であることに変わりはないが、女性の受診意欲を失わせていることも事実である。血清クレアチニンを検査項目に含めるかは、コストの問題もあるが、平成30年に向けて今後も検討していきたい。非肥満者への対応もよりきめ細かくなり、喫煙者に対する保健指導も重視されている。保健指導のための例文集の内容も充実してきた。最終的には全国で特定健診70%、特定保健指導45%の受診率を目指したい。最後に県ごとにみた65歳以上の老人有業率と一人あたり老人医療費との間には逆相関がみられており、年をとっても働ける社会環境の実現が医療費の縮小につながっていくとの言葉で講演を締めくくった。

2013年4月6日土曜日

「医学生へ 医学を選んだ君に問う」 前金沢大学付属病院長 河崎一夫

「医学生へ 医学を選んだ君に問う」  前金沢大学付属病院長 河崎一夫

医学を選んだのは君自身の責任である。
人前で堂々と医学を選んだ理由を言えるか?
奉仕と犠牲の精神はあるか?
医師の知識不足は許されない。
最後に君に願う。医師の喜びは二つある。
その一は自分の医療によって健康を回復した患者の歓び、
その二は世のため人のために役立つ医学的発見の歓びである。