2018年4月12日木曜日

神奈川県内科医学会 新春学術講演会 2018.01.18

「生活習慣病治療における配合薬の意義~高血圧・糖尿病を中心に~」
神奈川県内科医学会 会長 宮川政昭

治療抵抗性高血圧(糖尿病)とみなされる病態には、純粋に医学的なもの以外の要因もあるのではないだろうか。言い換えれば「治療不十分高血圧(糖尿病)」であり、これに適切に対処するためには、個々の患者の生活パターンに配慮した「患者との治療同盟」が必要であろう。
患者の服薬アドヒアランスを高めるためには配合薬の利用も一つの手段である。医師、薬剤師、患者、介護士4者の薬物療法に対する実態調査によれば、医師、薬剤師の望むのはエビデンスのそろっている薬である一方、患者、介護士の望むのは服薬回数の少ない薬であるという。配合薬により患者にとっては薬剤費が安くなり、介護士にとっては飲み残しの薬が減るメリットがある。また患者の半数以上は配合薬により治療意欲が向上するという。患者の想いと医療者の考えの溝を埋める努力が必要である。
臨床医の悩みとして、配合薬の種類が多すぎて、区別がつかない、覚えられないという声がある。しかし配合薬は多くを覚えなくても3~4個で十分である。降圧薬の配合についていえば、RA系の降圧薬には少量の利尿薬を合わせることにより良好な血圧コントロールが得られる。ARBとCCBの組み合わせではCCB増量により高い血圧はよく下げるが低い血圧はあまり下げないですむ。ただし、むくみに注意すること。
治療抵抗性高血圧(糖尿病)の患者の8割は処方通りに服薬していないという。治療効果を高めるためには、患者の生活についての聞き取りを行い、生活リズムにあった治療パターンを組み立てるのがよい。これこそが治療同盟を目指したわれわれの実地臨床の姿である。

「日本人の高血圧の成因と最適治療法の研究」
慶應義塾大学医学部 腎臓内分泌代謝内科 名誉教授 猿田享男

平成28年度井村臨床研究賞受賞記念論文「日本人における高血圧の特徴と最適治療法の研究」に基づく講演である。高血圧の原因としては「本態性高血圧」が多くを占める。原発性アルドステロン症(PA)について最近のJSH2014の基準を適応すれば、高血圧症例の12%以上を占めており、2次性高血圧のなかではPAが最多であることが、日本臨床内科医会アルドステロン症研究によってわかった。さて、本態性高血圧症の成因として(1)腎からのナトリウム・水排泄の障害(2)中枢における交感神経系の異常(3)レニン・アンギオテンシン系の異常(4)ナトリウム利尿ホルモンの異常(5)カルシウム代謝異常、などが考えられる。5つの成因について豊富なデータを示しながら詳しく説明した。また、これらが相互に複雑に影響を与えながら本態性高血圧の病態を形作っていることも示した。
高血圧の治療については、大規模臨床試験の結果を踏まえ、ガイドラインが改訂されるたびに、高血圧の定義と推奨される薬剤も変遷を遂げてきた。演者が代表研究者を務めたCASE-J研究においては、ARBカンデサルタンとCCBアムロジピンとの比較において、降圧、イベント、副作用において差がないことがわかった。しかし、その後の臨床研究において納得のいかない結果が出たことについて、おかしいと思っていたが、のちにデータの偽装があったことが判明したのは周知のとおりである。最近アメリカ心臓協会が示した、130/80以上を高血圧とする新しい基準を、我が国のガイドラインに反映させるかどうかは検討を要する。今後の高血圧の診療においては、家庭血圧をさらに重視することが求められよう。

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