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2014年6月6日金曜日

新たな健診の基本検査の基準範囲(日本人間ドック学会・健保連)に対する日本医師会・日本医学会の見解について

新たな健診の基本検査の基準範囲(日本人間ドック学会・健保連)に対する日本医師会・日本医学会の見解について
◆日本人間ドック学会・健保連が示す検診の検査基準に対する見解

 高久史麿日本医学会長、今村聡日医副会長は5月21日の定例記者会見で、日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が設置した「検査基準値及び有用性に関する調査研究小委員会」が本年4月に公表した報告書「新たな健診の基本検査の基準範囲 日本人間ドック学会と健保連による 150 万人のメガスタディー」について、多くのメディアが取り上げ、国民や医療現場に大きな混乱を来していることから、「拙速」と言わざるを得ないとの見解を示した。

 今村副会長は、報告書の概要を示したうえで、「従来、検診等に用いられる基準値は、各専門学会が諸外国などの基準値なども参考にしながら、日本人の身体的特性を考慮し、長期コホート(前向き追跡)研究などにより十分な検討を経て設定されているものである」と説明。今回、日本人間ドック学会等が示した個々の基準値について「関係専門学会と事前の十分な検討・協議もないままに唐突に新たな値を公表したことは、多くの国民に誤解を与え、医療現場の混乱を招いている実態に鑑みても、『拙速』と言わざるを得ない」と述べた。

 さらに、報告書の人間ドック受診者の検診データの分析について、前向き追跡研究でないことからエビデンスが高いとは言えず、疫学的にも予防医学的観点からもエビデンスを確定したうえで報告書を公表すべきで、そのエビデンスの判断を関係学会と検討することは当然であるとした。

 また、同副会長は、今回の基準設定の目的を、「生活の質の向上と医療費適正化に資する」としていることに対して、「医療費適正化は、適切な検診受診等により『結果』として派生するもので、適正化を目的としたものであれば、本末転倒と言わざるを得ない」と指摘。検診の意義は、疾病はそのリスクの早期発見であり、適切な医療等の早期介入により、個々人の健康の維持・増進を図ることが重要であるとした。

 各メディアに対しては、十分理解したうえで適切な報道を依頼するとともに、人間ドック学会と健保連には、早急に日本医学会、関係専門学会等との十分かつ慎重な検討を行う等の対応を求めるとした。

 高久日本医学会長は、今回の報告書について、関係する「日本高血圧学会」「日本動脈硬化学会」「日本脳卒中学会」から意見を求めたと説明。いずれの学会からも、「今回の報告書のデータは健康な人のその瞬時のデータを基にしており、本来は、前向き追跡研究でフォローしてから決めるべき」との意見が出されたとした。また、日本高血圧学会が「正常高値血圧」と称している収縮期血圧:130mmHg-139mmHg、拡張期血圧:85mmHg-89mmHgという値は、アメリカでは「prehypertension」と呼ばれ、世界的な常識になっている値であることから、今回の日本人間ドック学会らが示した報告書の値は世界の常識からもかけ離れたものと考えるとの見解を示した。

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