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2015年10月15日木曜日

インフルエンザワクチンの課題 城野洋一郎

第29回日本臨床内科医学会 シンポジウム3 特別講演
「インフルエンザワクチンの課題」 城野洋一郎 要旨
インフルエンザは人類の短い歴史の間でも多くの変異を繰り返して、大小の流行と多くの犠牲者を生み出してきた。それに対抗するための最初のインフルエンザワクチンは、1945年に米国で使用された全粒子ワクチンだった。その後1960年にスプリットワクチン、1997年にアジュバントワクチンが開発された。現在、全粒子ワクチンはパンデミック用に、スプリットワクチンは季節性インフルエンザ用に使い分けられている。副反応は全粒子で高くスプリットで低く、免疫原性は全粒子で高くスプリットで低い。予防接種の有効率は38割と幅があるが、特に39度超の高熱や死亡を防ぐ効果は明らかに高い。現在のワクチンの製造は鶏卵での培養が主流である。流行ウイルス株のヘマグルチニン(HA)とノイラミニダーゼ(NA)の遺伝子を卵の中でよく増殖するウイルス株に組み込み、卵に感染させて増やす「卵順化」を行うが、この過程で抗原性が変化して効かないワクチンとなる恐れがある。この対策として、組み換えHA抗原、遺伝子工学的に作ったウイルス様粒子、卵を使用しない細胞培養によるワクチンなどが考えられ、演者の属する化血研ではEB66 cellsによる細胞培養ワクチンの研究を行っている。このワクチンは十分な免疫原性を有し、安全性・忍容性にも問題がない。現状として、これまで2種類のB型インフルエンザが流行したシーズンでは、今までの3価ワクチンが有効でないことが多かったため、今シーズンよりA型と同様にB型を2つ入れた4価ワクチンが製造されることになった。ウイルスの抗原ドリフトによる免疫原性の変化には、コンピュータを使った解析により予想が行われている。将来的には、どのような型のインフルエンザに対しても効果のあるユニバーサルワクチンの実現が理想だが、現在のところHAのストーク部分の共通エピトープを利用して開発が進められている。現状のワクチンの有効性を高める工夫として、高齢者には、アジュバント、高ドーズ、皮内接種ワクチンなどが、また小児には、フルドーズ、生、アジュバントワクチンや妊婦へのワクチン接種などが考えられる。来るべきパンデミックに対応するため、全粒子ワクチンとスプリットワクチンの有効性の検討を行った結果、ナイーブ集団に対しては全粒子ワクチンの方が効果は優るが、発熱などの副作用も強かった。今後、副作用の少ない全粒子ワクチンを開発していきたい。

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