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2015年5月14日木曜日

神奈川県における肝炎治療の医療費助成制度

神奈川県における肝炎治療の医療費助成制度

【はじめに】
 肝炎治療薬はインターフェロン(IFN)、DAAsや核酸アナログ製剤を含めきわめて高額のものが多く、しかも半年~一年あるいはそれ以上と治療期間もかかるため、その治療にあたっては医療費助成制度を利用するのが現実的である。新しい肝炎治療法の登場に伴い医療費助成制度の範囲も拡がっている。平成25年度以降に適応拡大されたものは以下のとおりである。
 平成26年1月からは、「シメプレビル」を含む3剤併用療法(ペグインターフェロン、リバビリン、シメプレビルによるIFN治療)の助成を開始。平成26年9月からは、「ダクラタスビル」及び「アスナプレビル」併用療法の助成を開始。平成26年11月からは、「バニプレビル」を含む3剤併用療法(ペグインターフェロン、リバビリン、バニプレビルによるIFN治療)の助成を開始。

【対象者】
・C型ウイルス性肝炎の根治を目的とするIFN治療(少量長期投与を除く)及びIFNフリー治療並びにB型ウイルス性肝炎に対して行われるIFN治療及び核酸アナログ製剤治療
・神奈川県内に居住(神奈川県内に住民票有)
・国民健康保険や組合健康保険など、公的医療保険に加入者(他の医療給付制度で給付を受けている人は、原則としてこの制度の対象とならない)
本医療費助成制度の対象者とならない場合であっても、公的医療保険未加入の生活保護受給者や他の医療給付制度利用者が、IFN治療やIFNフリー治療及び核酸アナログ製剤治療を受けること自体は可能。

【対象疾患】 B型慢性肝疾患、C型慢性肝炎、C型代償性肝硬変

【医療給付の内容】
 C型ウイルス性肝炎の根治を目的とするIFN治療(少量長期投与を除く)及びIFNフリー治療並びにB型ウイルス性肝炎に対して行われるIFN治療(少量長期投与を除く)及び核酸アナログ製剤治療に係る保険診療(入院及び外来)の医療費のうち、月額自己負担限度額を超えた金額を助成。
 治療を行うために必要となる初診料、再診料、検査料、入院料等は助成対象だが、IFN治療、IFNフリー治療や核酸アナログ製剤治療と無関係な治療は助成の対象とならない。
 (医療費助成の対象とならない治療)
    ・肝庇護薬(SNMC、ウルソなど)による治療
    ・C型慢性肝炎に対するIFNの少量長期治療

【助成期間】
 原則として申請書を受理した日の属する月の初日から治療予定期間に応じて1年または7カ月。申請した日の属する月の初日より前から有効期間が始まる受給者証発行はできない。申請した日の属する月より後に有効期間が始まる受給者証の発行を希望する場合(診断書記載日の3カ月以内の月の初日まで可)は、その旨を肝炎治療受給者証交付申請書に明記。
 IFN単剤治療並びにIFN及びリバビリン併用治療については、一定の条件を満たした方のみ延長と2回目の申請可能。
 プロテアーゼ阻害剤(テラプレビルまたはシメプレビル、もしくはバニプレビル)を含む3剤併用療法については、上記の治療歴の有無にかかわらず、1回の制度利用が認められる。ただし3剤併用療法の治療歴がある場合でも、他のプロテアーゼ阻害剤を用いた再治療が適切であると担当医が判断した場合に限り、助成対象とな
 IFNフリー治療については、過去にIFN治療歴がある方も助成の対象とする。ただしダクラタスビル及びアスナプレビル併用療法を受けた方については、以後のIFNを含む治療の助成対象とはならない。 IFNフリー治療の助成期間の延長及び2回目の制度利用はない
 核酸アナログ製剤治療については、肝炎治療受給者証の更新申請ができ

申請場所 すべての手続きは、最寄りの保健所等で行うことができ

申請する際に必要な書類
肝炎治療受給者証交付申請書
診断書(神奈川県及び東京都が指定する肝臓専門医療機関が発行した県指定の様式)
 ※ただし、IFNフリー治療については、肝臓専門医療機関における日本肝臓学会専門医、もしくは日本消化器病学会専門医が作成したものに限
健康保険証のコピー(申請者の氏名が記載されたもの)
申請者および申請者と同一の世帯に属するすべての方が記載されていると確認できる住民票
申請者及び申請者と同一の世帯に属するすべての方の市町村民税の課税年額を証明する書類
市町村民税(所得割)の課税状況調査票
 ※ 「市町村民税の課税年額を証明する書類」とは、課税(非課税)証明書や市町村が通知する市町村民税の決定通知書の写し
 ※市町村民税(所得割)の課税状況調査票により市町村民税額合算対象からの除外希望の申立てが行え
世帯の市町村税課税年額に関する申立書
 ※月額自己負担限度額が2万円になることを了承していただいた方は、「市町村民税の課税年額を証明する書類の写し」と「市町村民税(所得割)の課税状況調査票」を「世帯の市町村民税年額に関する申立書」に代えることもできる。


月額自己負担限度額
階層区分
自己負担限度額(月額)
世帯の市町村民税(所得割)課税年額が235,000円以上の場合
20,000円
世帯の市町村民税(所得割)課税年額が235,000円未満の場合
10,000円
 ※原則として申請者と同じ住民票上の世帯にいるすべての方の市町村民税(所得割)額を合算して、月額自己負担限度額が決定され。ただし、申請者と同じ住民票上の世帯にいる方で、以下の要件すべてを満たす方がいる場合は、市町村民税額合算対象から除外でき
    申請者の配偶者ではないこと
    申請者及びその配偶者と税制上の扶養関係にないこと
    申請者及びその配偶者と医療保険上の扶養関係にないこと
    申立てがあること
 所得階層認定の課税額合算対象からの除外希望の方は、次書類を提出のこと
    1. 肝炎治療受給者証交付申請書
    2. 診断書(神奈川県及び東京都が指定する専門医療機関が発行した県指定のもの。)
    3. 申請者本人・申請者の配偶者・除外対象者の健康保険証のコピー
    4. 申請者及び申請者と同一の世帯に属するすべての方が記載されていると確認できる住民票
    5. 申請者及び申請者と同一の世帯に属するすべての方の市町村民税の課税額を証明する書類
    6. 市町村民税(所得)の課税状況調査票

医療費の払戻し
 肝炎治療受給者証が届くまでの間に助成対象となる医療費を医療機関や薬局に支払った場合には、患者からの請求によって対象医療費を払戻しにより助成す。ただし、健康保険から支給される高額療養費に該当する金額については、神奈川県からは助成されない。払戻しには、肝炎治療費給付申請書を利用のこと。肝炎治療費給付申請書を県が受け付けてから2カ月程度で払戻しが行われ

受給者証の更新(核酸アナログ製剤治療の受給者証のみ)
 核酸アナログ製剤治療の受給者証更新ができる。手続きは基本的に新規申請の手続きと同じで、手持ちの受給者証の有効期限の3カ月前から受給者証の有効期限までの間に更新の手続きを行うこと

IFN単剤治療並びにIFN及びリバビリン併用治療に係る2回目の制度利用
1.C型慢性肝疾患の要件
 下記の(1)を満たし、かつ(2)(3)のいずれにも該当しない場合は、IFN治療に係る2回目の制度利用ができ。手続きは基本的に新規申請と同じ。
(1)HCV-RNA陽性のC型慢性肝炎及びC型代償性肝硬変でIFN治療を行う予定、又はIFN治療実施中の者のうち、肝がんの合併のないもの
(2)これまでの治療において、十分量のペグインターフェロン及びリバビリン併用療法による48週投与を行ったが、36週目までにHCV-RNAが陰性化しなかった場合
(3)これまでの治療において、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法による72週投与が行われた場合
2.B型慢性肝疾患の要件
 下記のいずれも該当する場合は、IFN治療に係る2回目の制度利用ができ。手続きは基本的に新規申請と同
(1)これまでにペグインターフェロンによる治療を受けていない場合
(2)今回ペグインターフェロンによる治療を受ける場合

3剤併用療法の制度利用について
 下記の要件に合致した場合に、プロテアーゼ阻害剤(テラプレビルまたはシメプレビル、もしくはバニプレビル)を含む3剤併用療法の制度利用が可能。手続きは新規申請と同じです。
HCV-RNA陽性かつセログループ1型のC型慢性肝炎で3剤併用療法(ペグインターフェロン、リバビリンとテラプレビルまたはシメプレビルもしくはバニプレビルによるIFN治療)を行う予定、又は実施中の方のうち、肝がんの合併がないもの
1 IFN単剤治療並びにIFN及びリバビリン併用治療の治療歴の有無は問いません。ただしIFNフリーに係る治療歴のない方に限
2 原則1回のみの助成とすが、3剤併用療法の治療歴のある方については、他のプロテアーゼ阻害剤で再治療することが適当であると担当医により判断された場合、改めて助成の対象とすることができ

受給者証の有効期間の延長(IFN治療について)
 下記の3つの場合に限り、延長が可能。どちらの場合も専門医療機関の医師の所見がある申請書の提出が必要。
1. ペグインターフェロン及びリバビリンの延長投与に伴う期間延長
 C型慢性肝炎セログループ1型かつ高ウイルス量症例に対する、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法の実施に当たり、下記の(1)または(2)の条件を満たし、医師が72週投与が必要と判断する場合に、6カ月を限度とする延長が可能。肝炎治療受給者証(IFN)有効期間延長申請書(72週)を最寄の保健所等へ提出。
(1)これまでの治療において、ペグインターフェロン及びリバビリン併用療法48週を行い、36週目までにHCV-RNAが陰性化したが再燃したケースで、今回の治療でHCV-RNAが36週目までに陰性化した症例に該当するケース
(2)(1)に該当しないケースで、今回の治療で投与開始後12週後にHCV-RNA量が前値の1/100以下に低下するが、HCV-RNAが陽性で、36週までに陰性化した症例に該当するケース
2. シメプレビルを含む3剤併用療法の投与期間延長
 シメプレビルを含む3剤併用療法の実施に当たり、下記の(1)または(2)の要件を満たし、医師がペグインターフェロン及びリバビリンを更に24週投与することが適切と判断する場合に、6カ月を限度とする延長が可能。肝炎治療受給者証(プロテアーゼ阻害剤を含む3剤併用療法)有効期間延長申請書を最寄の保健所等へ提出。
(1)これまでの24週以上のIFN治療[(ペグ)IFN製剤単独、リバビリンとの併用療法及び他のプロテアーゼ阻害剤を含む3剤併用療法]でHCV-RNAが一度も陰性化しなかったケース
(2)IFN治療の開始12週後にHCV-RNAが前値の1/100以下に低下せず、治療が24週未満で中止となったケース
3. 副作用による治療中断に伴う期間延長
 副作用による休薬等、本人に帰責性のない事由により治療を中断した場合については、受給者証の有効期間を2カ月を限度とする延長が可能。肝炎治療受給者(IFN)証有効期間延長申請書(副作用等)を最寄の保健所等へ提出。

受給者証の記載内容の変更
 登録事項変更届に変更内容が分かる書類を添えて最寄りの保健所等へ提出。
変更内容
添付書類
氏名や住所の変更
住民票(原本)や運転免許証などの写し
月額自己負担限度額の変更
世帯全員の市町村民税(年額)を証明する書類
世帯構成が変更となった場合は住民票の写しも必要
市町村民税額合算からの除外対象者を追加する場合は市町村民税(所得割)の課税状況調査票と申請者、申請者の配偶者、除外対象者の健康保険証の写しと申請者及び申請者と同一の世帯に属するすべての方の課税状況調査票も必要
医療機関の変更及び追加
添付書類は不要

受給者証の返納・再交付
 治癒、治療の中止、その他の理由によって受給者の資格を失った場合には、肝炎治療受給者証返納届・再交付申請書を最寄りの保健所等へ提出。また破損や紛失等の理由で受給者証の再交付が必要となった場合には、肝炎治療受給者証返納届・再交付申請書を最寄りの保健所等へ提出。後日、受給者証を郵送する

他の都道府県からの転入
 他の都道府県において肝炎治療医療給付を受けていて、神奈川県に転入後も引き続き医療給付を希望する場合は、転入届(様式第8号)を提出することによって、診断書による認定審査を経ることなく、肝炎治療受給者証を交付する
 転入届には以下の書類を添付。
    ・住民票(コピー不可)、運転免許証のコピー等、転居したことが確認できるもの(転入日からの医療給付を希望する場合は、住民票。ただし、住民票以外の場合は、申請日から医療給付が開始)
    ・肝炎治療受給者証のコピー(転入前の都道府県で交付されていたもの)
    ・健康保険証のコピー
 交付する受給者証は、対象疾患・月額自己負担限度額・有効期間終期について転入前の都道府県と同じものを交付。

QA
Q:他の治療を実施している場合は、その治療費も肝炎医療費助成に含まれますか?
A:医療費助成の対象となるのは肝炎の治療に関係する診察料、検査料、薬代に限ります。

Q:治療開始前のCTやエコー検査は医療費助成の対象になりますか?
A:医療費助成対象期間に行われ、かつ検査の実施後に抗ウイルス治療が行われていれば医療費助成対象となります。

Q:通院時の交通費は医療費助成の対象になりますか?
A: 通院時の交通費は医療費助成の対象になりません。ただし、所得税の医療費控除の対象になる場合がありますので、交通費の領収書は保管ください。

Q:院外処方の場合、病院と調剤薬局それぞれに自己負担限度額を払わないといけないのでしょうか?
A:病院の支払いと調剤の支払い合わせて自己負担限度額を超えた分は支払う必要はありません。

Q:受給者証は携帯したほうが良いですか?
A:健康保険証と共に携帯し、受診するときは持っていきましょう。月額自己負担限度額管理票を受け取った方は、そちらも一緒に携帯しましょう。

Q:支払い時の領収書はずっと保管しなければいけませんか?
A:所得税の医療費控除ができる場合がありますので、保管してください。

Q:医療費助成の期間は決まっていますか?
A:医療費助成の期間は助成を開始してから原則1年以内ですが、医師の判断により延長が可能な場合もあります。

Q:過去に医療費助成を受けたことがある場合も、再度申請できますか?
A:以前に受けた治療内容によっては、2回目の医療費助成制度利用が可能な場合もあります。医療費助成の延長、更新は医師の判断により可能な場合もあります。

【参考】
 神奈川県の肝炎に対する取組2014102日) http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f7029/

 ブリストル・マイヤーズ株式会社 肝炎情報サイト 肝炎ネット http://www.kanen-net.info/

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