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2011年11月20日日曜日

「最先端の降圧療法ー新ガイドラインに向けてー」 愛媛大学大学院病態情報内科学教授 檜垣實男

講演1「最先端の降圧療法ー新ガイドラインに向けてー」
 わが国の高血圧患者は増加しており、4000万人を超えていると推定される。これは肥満者の増加と重なっており、日本の高血圧は主として肥満により発症していると考えられる。その多くは病識がなく、治療されていない患者が多い。近年男性と高年女性の肥満傾向が目立つが、若年女性のやせ傾向や喫煙率の上昇も問題である。低栄養状態や喫煙する妊婦の胎児にはepigeneticな遺伝子変化がおこり、飢餓に適応できるよう、小さな心筋、小さな膵臓、小さな腎臓などをもって生まれ、これは生涯変わることはないため、飽食や高食塩食などの環境の中では容易に高血圧や糖尿病を発症することになるのである。肥満に加えて食塩の過剰摂取も重大な問題である。日本人は世界一の食塩摂取量(11g/日)であり、推奨される6g/日未満を大きく上回っている。減塩を達成するためには個人の努力も必要だが、社会全体での取り組みがなされる必要がある。高血圧の治療においてARB(アンギオテンシン受容体阻害薬)がCCB(カルシウムチャネル阻害薬)よりも選ばれるのは、降圧効果以外の代謝改善や臓器保護作用があるからである。しかし単剤では降圧が不十分となることが多く、CCBや利尿薬との併用が必要となる。その際、薬の数が増えると服薬アドヒアランスが低下するため、配合錠の使用による工夫も有用である。現在の高血圧治療ガイドラインにおける課題をいくつか指摘し、次の新しいガイドラインに盛り込まれるであろう内容を予想した。最後に新しい高血圧の治療法として、腎動脈アブレーションの紹介を行った。

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