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2017年10月10日火曜日

子宮頸がん予防ワクチン 〜副反応報道と積極的な接種勧奨の差し控えが もたらしたもの〜

第31回日本臨床内科医学会 教育講演5 2017.10.8
子宮頸がん予防ワクチン 〜副反応報道と積極的な接種勧奨の差し控えが もたらしたもの〜
大阪大学大学院医学系研究科 産科学婦人科学 学部内講師
上田 豊

先進国中わが国だけが20~30代女性の子宮頸がんとその前がん病変が急増している。HPVに感染すると前がん病変を経て発癌に至る。原因ウイルスはHPV-16/18が主体で、ワクチンによる予防が可能である。わが国の若年女性の検診受診率は極めて低いため、予防ワクチンへの期待は大きく、2010年度からHPVワクチンの公費助成が始まり接種率は約7 割だったが,副反応とされる症状がマスメディアで繰り返し報道されたため,2013年から定期接種となったにも関わらず同年厚労省の積極的勧奨の一時中止が発表され,現在まで続いている。これは日本だけの特異な状況であり、これにより対象年齢の女子の接種はほぼ停止となり,2000年生まれを境に接種状況が大きく異なることとなった。これまでの調査研究によれば「重篤副反応」は0.007%に過ぎず、その多くは認知行動療法により改善している。ワクチン接種による、発癌リスクの高いHPV-16 /18の感染予防効果も明らかとなってきた。非接種者のリスクは高く、一刻も早い厚労省によるワクチン接種の積極的勧奨の再開が望まれる。アンケート調査によれば、積極的勧奨再開後も接種率の伸び悩みが予想されるため、接種の安心感、利得感、「みんな」感を高める工夫が必要で、臨床内科医の働きかけが重要だと感じた。(記 岡 正直)

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