2017年10月10日火曜日

職場における禁煙の推進方策

第31回日本臨床内科医学会 産業医学研修会 4 2017.10.9
職場における禁煙の推進方策
大阪国際がんセンター がん対策センター 疫学統計部 副部長
田淵 貴大

わが国では喫煙により年間約13万人、受動喫煙により年間約1 万5千人が死亡していると推定される。タバコを吸う人も、その煙を吸わされている人もタバコの被害者であることに変わりはなく、加害者はタバコ産業である。タバコ産業は人類の敵といっても過言ではないという。アメリカではタバコ産業は健康被害に対して42兆円の賠償金の支払いを命じられており、海外でも多くのタバコを販売しているJTもいつ訴えられても不思議ではない。JT株の多くを保有する日本政府も人類の敵とみなされるだろう。日本でのタバコの税収は2兆2400億円だが、タバコによる損害は労働力の損失、医療費の増大や火災など4兆円を超えているとのことである。受動喫煙は喫煙者による「他者危害」である。誰にも他人に危害を加える権利などないにもかかわらず、2010年に神奈川県,2013年に兵庫県で受動喫煙防止条例が施行された現在でも,いまだ多くの労働者が、タバコの煙が充満する屋内で働き、食事し、生活している。例えば,わずか3 人が喫煙する室内はPM2.5濃度が600 mg/立方m になり、緊急事態と考えられる500を超えてしまうのである。職場の全面禁煙を達成するためには、まず自分自身が全面禁煙の重要性を理解し、職場のトップに理解を得、職場のみんなに重要性を理解させ、職場内で対立せず協調しつつ、外部の専門家とも協働して進めることである。全面禁煙が達成できた後も職場の全面禁煙の効果を評価し、全面禁煙に対する妨害や脅威を退ける努力が必要である。タバコ対策の三本柱は優先順に(1)日本の安すぎるタバコ価格を見直し、増税を含むタバコの値上げ(2)意味をなさない分煙ではなく、職場や家庭などを含む全ての空間の禁煙(3)日本では行われていないTVのCMなどによる強力な脱タバコキャンペーンである。人は論理的で正しいというだけでは、なかなか行動の変容を起こさないため、人のこころや感情に訴えかけることも重要である。(記 岡 正直)

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