ページ

2016年10月16日日曜日

日本臨床内科医学会 特別講演10「かかりつけ医に関連した医療紛争・医療訴訟の現状とその対策」水島綜合法律事務所 弁護士 水島幸子先生

日本臨床内科医学会 特別講演10「かかりつけ医に関連した医療紛争・医療訴訟の現状とその対策」水島綜合法律事務所 弁護士 水島幸子先生

 医療事故直後に謝罪しても数年後に訴訟になることはよくある。医療費の免除は医療ミスを認めることになるので絶対にしないこと。損害賠償の一部前渡しと解釈されるからである。共感にもとずく謝罪は美しい態度かもしれないが、発言には細心の注意を払うべきである。謝罪だけで解決しない事案もあり、謝るケースとそうでないケースを見分ける必要がある。事実経過を書いた文書は要求されても決して渡さないこと。また期限を切る要求にも決して応じないことである。
 刑事上の責任と言えば、その行為が「傷害」にあたるかということである。「傷害」と認定するためには(1)構成要件該当性(2)違法性(3)有責性の3つが満たされる必要がある。医療行為は(1)は満たしているのだが、患者の同意のもとに行われる正当な医療行為である限り(2)を満たさないため「傷害」ではないと考えられる。
 民事上の責任については「過失」の認定が問題になる。過失は「予見可能性」があり、かつ「結果回避可能性」がある場合に認定される。この判断の拠り所が「医療水準論」である。医療水準は決して一律のものではなく時代や地域、医療機関によって変化するものである。添付文書や診療GLなどが参考にされることが多い。医療ミスがない場合でも不十分な説明に対しては「説明義務違反」で過失が認定されることがあるので注意すること。
 改正医療法による「医療事故調査制度」が発足した。報告書は開示されるので開示に耐えうる内容にする必要がある。過失が明らかでない場合は安易な原因分析と再発防止策の策定は行うべきでない。(記 岡 正直)

0 件のコメント: