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2014年3月9日日曜日

神奈川県内科医学会「臨床研究の利益相反(COI)に関する指針」

神奈川県内科医学会「臨床研究の利益相反(COI)に関する指針」

外部との経済関係により公的研究で必要な公正かつ適正な判断が損なわれうる事態、すなわち利益相反(COI)状態を適切に管理するため神奈川県内科医学会(以下、本会)は、内科系関連学会が作成した「臨床研究の利益相反に関する共通指針」に準拠して、本会のCOI に関する指針を策定する。
I.目的
本指針の目的は、本会が会員などの利益相反状態を適切に管理して、研究成果の発表や普及・啓発などの中立性と公明性を維持しつつ適正に推進させ、内科学に含まれる疾患の予防・診断・治療の進歩に貢献し社会的責務を果たすことにある。本指針では利益相反についての基本的な考えを示し、本会の会員などが各種事業に参加し発表する場合、自らの利益相反状態を自己申告により適切に開示し、本指針を遵守することを求める。
II.対象者
利益相反状態が生じる可能性がある以下の対象者に対し、本指針が適用される。
(1)本会会員
(2)本会の学術講演会などで発表する者
(3)本会の定款で定める役員、各種部会の部会長および部員、各種委員会の委員長および委員など
(4)本会の事務職員
III.対象となる活動
本会が行うすべての事業活動に対して本指針を適用する。
(1)学術講演会(年次総会含む)などの開催
(2)ニュース、会誌、冊子などの発行
(3)研究および調査の実施
(4)研究の奨励および研究業績の表彰
(5)生涯学習活動の推進
(6)関連学術団体との連絡および協力
(7)その他目的を達成するために必要な事業
IV.申告すべき事項
対象者は、個人における以下の事項で、細則で定める基準を超える場合には、その正確な状況を本会会長に申告するものとする。なお、申告された内容の具体的な開示、公開の方法については別に細則で定める。
(1)企業・法人組織、営利を目的とする団体の役員、顧問職、社員などへの就任
(2)企業の株の保有
(3)企業・法人組織、営利を目的とする団体からの特許権などの使用料
(4)企業・法人組織、営利を目的とする団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)
(5)企業・法人組織、営利を目的とする団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料
(6)企業・法人組織、営利を目的とする団体が提供する医学研究費(治験、臨床試験費など)
(7)企業・法人組織、営利を目的とする団体が提供する研究費(受託研究、共同研究、寄付金など)
(8)企業・法人組織、営利を目的とする団体がスポンサーとなる寄付口座
(9)その他、上記以外の旅費(学会参加など)や贈答品などの受領
V.回避すべき事項
(1)対象者の全てが回避すべきこと
本会の会員などは、医学研究の結果とその解釈といった公表内容や、医学研究での科学的な根拠に基づく診療ガイドライン・マニュアルなどの作成について,その医学研究の資金提供者・企業の恣意的な意図に影響されてはならず、また影響を避けられないような契約を資金提供者などと締結してはならない。
(2)医学研究の臨床試験責任者が回避すべきこと
医学研究、特に臨床試験、治験などの計画・実施に決定権を持つ総括責任者には、次の項目に関して重大な利益相反状態にないと社会的に評価される研究者が選出されるべきであり、また選出後もその状態を維持すべきである。
(a)医学研究を依頼する企業の株の保有
(b)医学研究の結果から得られる製品・技術の特許料・特許権などの獲得
(c)医学研究を依頼する企業や営利を目的とした団体の役員、理事、顧問など(無償の科学的な顧問は除く)
但し、上記に該当する研究者であっても、当該医学研究を計画・実行するうえで必要不可欠の人材であり、かつ当該医学研究が社会的に極めて重要な意義をもつような場合には、その判断と措置の公平性、公正性および透明性が明確に担保されるかぎり、当該医学研究の試験責任医師に就任することができる。
VI.実施方法
(1)会員の責務
会員は研究成果を学術講演などで発表する場合、当該研究実施に関わる利益相反状態を発表時に、本会の細則にしたがい所定の書式で適切に開示すること。研究などの発表との関係で、本指針に反するとの指摘がなされた場合には、会長、副会長は利益相反を管轄する委員会(以下、利益相反委員会)に審議を求め、その答申に基づき妥当な措置方法を講ずる。
(2)役員などの責務
本会の定款で定める役員、各種部会の部会長および部員、各種委員会の委員長および委員、などは本会に関わるすべての事業活動に対して重要な役割と責務を担っており、当該事業に関わる利益相反状態については、就任した時点で所定の書式にしたがい自己申告を行なうこと。また、就任後新たに利益相反状態が発生した場合には、規定に従い修正申告を行うこと。
(3)利益相反委員会の役割
利益相反委員会は、本会が行うすべての事業において、重大な利益相反状態が会員に生じた場合、あるいは利益相反の自己申告が不適切で疑義があると指摘された場合、当該会員の利益相反状態をマネージメントするためにヒアリングなどの調査を行い、その結果を会長に答申する。
(4)会長、副会長の役割
会長、副会長は、役員などが本会の事業を遂行するうえで、重大な利益相反状態が生じた場合、あるいは利益相反の自己申告が不適切であると認めた場合、利益相反委員会に諮問し、答申に基づいて改善措置などを指示することができる。
(5)学術講演会担当責任者の役割
学術講演会の担当責任者は、医学会で研究成果が発表される場合には、その実施が本指針に沿うか検証し、本指針に反する演題の発表を差し止めることができる。この場合速やかに発表予定者に理由を付して通知する。なお、これらの措置の際に上記担当責任者は利益相反委員会に諮問し、その答申に基づいて改善措置などを指示することができる。
(6)情報広報委員会の役割
情報広報委員会は、本会の刊行物の論文、記事、意見などが発表される場合、その実施が本指針に沿っていることを検証し、本指針に反する場合には掲載を差し止めるなどの措置を講ずることができる。この場合、速やかに当該論文投稿者に理由を付してその旨を通知する。本指針に違反していたことが掲載後に判明した場合は、当該刊行物などに情報広報委員長名でその旨を公知することができる。なお、これらの措置の際に情報広報委員長は利益相反委員会に諮問し、その答申に基づいて改善措置などを指示することができる。
(7)その他
その他の委員長・委員は、それぞれが関与する事業に関して、その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する事態が生じた場合には、速やかに事態の改善策を検討する。なお、これらの対処については利益相反委員会に諮問し、答申に基づいて会長、副会長は改善措置などを指示することができる。
VII.指針違反に対する措置と説明責任
(1)指針違反者に対する措置
会長、副会長は、別に定める規則により、本指針に違反する行為に関して審議する権限を有しており、神奈川県医師会の倫理委員会に諮問し、答申を得た上で会長、副会長で審議した結果重大な指針違反があると判断した場合には、その違反の程度に応じて一定期間、次の措置の全てまたは一部を講ずることができる。
(a)本会が開催するすべての講演会での発表禁止
(b)本会の刊行物への論文掲載禁止
(c)本会の講演会の医学会長就任禁止
(d)本会の会長、副会長への就任、部会、委員会などへの参加禁止
(e)本会会員の資格停止、除名、あるいは入会の禁止
指針違反者に対する措置が確定した場合、当該会員が所属する他の内科系関連学会の長へ情報提供を行うものとする。
(2)不服の申立
被措置者は、本会に対し不服申立をすることができる。本会の会長は、これを受理した場合、速やかに不服申立て審査委員会(暫定諮問委員会)を設置して審査を委ね、その答申を会長、副会長で協議したうえで、その結果を不服申立者に通知する。
(3)説明責任
本会は、自らが関与する場所で発表された医学研究の成果について、重大な本指針の違反があると判断した場合は、直ちに会長、副会長の協議を経て社会に対する説明責任を果たさねばならない。
VIII.細則の制定
本会は、本指針を運用するために必要な細則を制定することができる。
IX.指針の改正
本指針は、社会的要因や産学連携に関する法令の改正、整備ならびに医療および研究をめぐる諸条件に適合させるためには、定期的に見直しを行い、改正することができる。
X.施行日
1.本指針は2014 年5月18日より試行する。
2.本指針は2015 年5月18日より施行する。

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