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2012年3月5日月曜日

神奈川県内科医学会 第75回集談会報告

【第75回集談会報告】
 第75回集談会が2012年2月18日(土)15時から18時30分まで小田急本線本厚木駅北口より徒歩5分のレンブラントホテル厚木(もとロワジールホテル)にて第5地区厚木内科医会の主管で開催されました。33題の一般演題の発表が3つの会場で並行して(1会場はポスター展示で)行われ、活発なディスカッションが持たれました。一般演題と特別講演の進行と並行して、ポスター会場にて頸動脈エコー、血圧脈波検査、骨塩定量も行われました。休憩コーナーではコーヒーやスナックもふるまわれました。17時30分からの特別講演は「腎障害を伴う高血圧治療」を埼玉医科大学腎臓内科教授の鈴木洋通先生にお話しいただきました。以下に講演の簡単な内容を記します。
 慢性腎臓病における血管病の進展は、血圧、容量負荷、RA系の亢進だけでなく、カルシウム・リン代謝異常による血管の石灰化や血管内皮障害・酸化ストレス・高血糖・脂質異常が複合して血管系の変化を起こし、収縮期血圧の上昇・冠血流低下・左室肥大から心血管障害となり死亡に至るという流れである。
 腎障害者は昼間立位をとっているときは腎血流の低下によりナトリウム貯留がすすみ血圧も上昇するが、就寝し臥位をとることによって腎血流の上昇とナトリウム排泄が増え血圧も低下傾向となる。よって腎障害者は夜間頻尿を訴えることが多いのである。また、腎障害者は早朝の高血圧を示すことが多いのも特徴的である。高血圧は腎障害を悪化させるため、血圧が高い症例では、降圧効果の強いCCBが第一選択となる。
 日本で一番多いIgA腎症では、血圧を厳格に管理することによって腎機能低下を防ぐことができる。
 早朝の血圧のコントロールは重要な意味をもつ。早朝血圧を下げることにより心機能の改善が期待できる。早朝の収縮期血圧が130より高いとGFRの悪化がみられる。外来血圧はあてにならないことが多く、家庭血圧測定の重要さが注目されている。糖尿病者では朝の収縮期血圧が130強で腎機能低下をきたす。
 高血圧によって若年者の腎機能低下は早く進むが、高齢者の場合はゆっくりであるため、高齢者の収縮期血圧のコントロールは140程度でよいのではないか。
 最近心臓腎臓の同時不全例が増加している。心機能の悪い人は120/75のより低い血圧コントロールにしたほうが、心機能改善効果がみられるが、心腎不全により血圧がすでに低下している場合は治療が難しい。
 慢性腎臓病(CKD)Stage4,5の人はRA系の降圧薬を半量にすること。蛋白尿が多い場合、ACEIにARBの追加処方は有効である。ARBは腎機能の改善や腎でのインスリン代謝改善(糖尿病の発症抑制)などの働きを介して、心血管病変を減少させていると考えられる。
 心血管の状態を知るためには、血圧測定のみならず、腎機能・尿蛋白・貧血・カルシウムリン代謝・糖代謝などの情報にも注意して診療することが重要である。
 豊富な臨床データの分析を交えながら、明日からの日常診療に役立つ情報をお示しいただきました。
 18時35分からの懇親会では厚木内科医会幹事の今岡千栄美先生による素晴らしいオペラ歌唱に深い感銘を受け、引き続きハーモニカの聖地と言われる厚木ならではの多彩なハーモニカにより編成されたオーケストラによる本格的な楽曲の演奏に圧倒されつつ、次回の担当の第1地区横浜内科学会副会長小野容明先生の挨拶もあり、盛会のうちに終了いたしました。

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