2017年11月29日水曜日

学会の動き(神内医ニュース第79号)

学会の動き(神内医ニュース第79号) 総務部会長 岡 正直

 神奈川県内科医学会総務企画部会が企画担当している講演会は、定時総会時学術講演会、臨床医学研修講座、新春学術講演会そして集談会の4つです。

【第42回臨床医学研修講座報告】
 第42回臨床医学研修講座が平成29年9月2日(土)15時より川崎日航ホテル12階「西の間」にて開催されました。担当は聖マリアンナ医科大学と川崎市内科医会で、共催は第一三共株式会社でした。聖マリアンナ医科大学循環器内科教授 明石嘉浩先生の総合司会の下、聖マリアンナ医科大学総合診療内科教授 松田隆秀先生の開会の辞に続いて、神奈川県内科医学会会長 宮川政昭先生の挨拶の後、6つのご講演をお聴きしました。ご講演の内容を簡単にご紹介いたします。

【講演1】「知って得するAS診療:聴診~TAVIまで」
座長:神奈川県内科医学会 神奈川高血圧・腎疾患他作委員会委員 堺 浩之 先生
演者:聖マリアンナ医科大学 循環器内科講師 出雲昌樹 先生
 高齢者の増加に伴い、退行性変化による弁膜症とくに大動脈弁狭窄(aortic stenosis:AS)が増加している。無症状の患者も多いが、症状が現れると急速に悪化し予後不良である。ASによる突然死は決して多くはなく、心機能低下に伴う症状に苦しむ患者が多い。薬物治療による予後改善効果はなく、外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)が効果的であったが、経カテーテル大動脈弁植込術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)が登場するまでは、手術例は50%ほどにとどまっていた。近年TAVIを行う症例が増え、適応範囲も拡大している。
 TAVIの適応は、弁口面積、流速、圧格差、左室駆出率、自覚症状を心エコーや問診で評価することにより決定する。圧格差の少ない患者にも予後不良例が多いことに注意すべきである。ASによる左心室への負荷により心筋が肥大して心拍出量が減少し圧格差が出にくくなるためである。最近のデータでは、高リスクのみならず中リスクの患者においてもTAVIの成績はSAVRを上回っており、今後さらにTAVIによる治療を推進していきたいと考えている。
【講演2】「虚血性脳卒中における抗血栓療法」
座長:神奈川県内科医学会 心臓血管病対策委員会委員長 國島友之 先生
演者:聖マリアンナ医科大学 神経内科准教授 秋山久尚 先生
 脳梗塞の分類として、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、脳塞栓、動脈解離、血管炎、また原因がよくわからないものとして潜因性脳梗塞があり、その中でとくにembolic stroke of undetermined source(ESUS)が注目されている。
 ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞に対しては抗血小板療法を、心原性、その他に対しては抗凝固療法を行う。急性期の治療として、発症4.5時間以内にrt-PA(アルテプラーゼ)による抗凝固療法を行う。抗血小板薬2剤併用療法(dual antiplatelet therapy:DAPT アスピリンとクロピドグレル)は急性期においては有効である。再発予防のためには、ワーファリンよりも頭蓋内出血リスクの少ない直接経口抗凝固薬(direct oral anticoagulants:DOAC いままでのNOACと同じもの)を使用する。
 脳塞栓の原因の多くを占める潜在している非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)の検出のためには、テレメトリー式心電計(duranta)や植込み型心臓モニター(ICM)などの長時間心電図モニタリングが有用である。DOAC使用中の緊急手術などの事態に対しては、DOACの中和剤が利用できるようになった。DOACの中止により20倍のリスク上昇があるため、不用意に中止しないこと。
【講演3】「プロトンポンプ阻害剤長期投与の有用性と課題」
座長:神奈川県内科医学会 服部隆志 先生
演者:聖マリアンナ医科大学 消化器・肝臓内科病院教授 安田 宏 先生
 プロトンポンプ阻害薬(PPI)の長期投与の適応となるのは、胃食道逆流症(GERD)の患者とNSAIDsや抗血栓療法により消化管出血のリスクの高い患者である。ヘリコバクタピロリ感染症の減少や高脂肪食、過食により日本人の酸分泌は増加している。
 びらん性GERD、Barrett食道、亀背を伴う高齢者と高度裂孔ヘルニア症例にはPPI長期投与が勧められる。また、抗血栓薬やNSAIDsはcox-1やcox-2阻害により粘膜障害を引き起こすので、PPI長期投与が望ましい。消化性潰瘍発症時に抗血栓薬を中止すると心血管イベントを起こしやすいので、できるだけ中止しないことである。
 PPI長期投与に伴うデメリットは、胃底腺ポリープの多発、parietal cell protrusion(PCP)、死亡率や認知症の増加?、急性間質性腎炎、市中肺炎増加、カルシウム骨代謝の抑制、チエノピリジン系薬剤との相互作用、コラーゲン大腸炎、腸内細菌叢の変化などである。
【講演4】「病者に寄り添う」
座長:神奈川県内科医学会副会長 出川寿一 先生
演者:聖マリアンナ医科大学 特任教授・宗教主事 小田武彦 先生
 宗教者とは、自分を超えた存在に自らを委ねて生きたいと願っている求道者のことである。聖書は「愛さない者は死の中に留まっている」という。愛さないことは、精神的死を意味する。病者に寄り添うとき、彼らの疑問に対して答えることはしない。病者が持っている宝物に彼ら自身が気づく手助けをするのである。日本人の7割は無宗教であるため、病者の宗教心は問題にすることはない。傾聴により病者の感情に寄り添い、内面の痛みを受け止めようとしている。聖マリアンナ医大では希望者にジャン・ギ・デュポンの「病気の時の祈り」を無料配布している。病気になった時こそ自らの大切なものに気づくチャンスなのだという。阪神淡路大震災をきっかけに宗教者の宗派の違いを超えて協力する動きが始まった。東日本大震災でさらに大きなうねりとなり、多くの大学で「臨床宗教師」の養成が始まっている。あなたの身近にも訓練を受けた宗教者がいるかもしれない。
【講演5】「関節リウマチ治療における最新の潮流」
座長:川崎市内科医会幹事 大曽根康夫 先生
演者:聖マリアンナ医科大学 リウマチ・膠原病・アレルギー内科教授 川畑仁人 先生
 慢性関節リウマチは、朝のこわばりなどの症状で発症し、関節の腫脹疼痛きたし、関節の変形や骨びらんにいたる難治性の疾患である。その治療の原則は(1)早期治療(2)treat to target目標達成に向けた治療(3)tight control強化治療である。抗リウマチ薬としてメトトレキセート(MTX)を第一選択薬とし、ステロイドを抗リウマチ薬と認識し積極的に併用を推奨する。予後不良因子があれば次の段階として生物学的製剤を使用する。分子標的薬のJAK阻害薬は生物学的製剤と同じ位置づけとなっている。
 日本最大であるNinjaリウマチデータベースによる最新の潮流では、MTXの使用量は増えてはいるが頭打ちで抗リウマチ薬の併用が増えている。ステロイドの使用は減っており、生物学的製剤では非TNF製剤の単剤使用が増えている。これらの傾向は日本におけるリウマチ患者の高齢化や発症年齢の高齢化を反映したものと考えられる。
 まとめると、寛解未達成は6割に及ぶため治療ストラテジの改良が必要である。発症して6ヶ月間がwindow of oppotunityであり、薬剤フリーの寛解達成のためには早期治療開始が重要である。挙児希望者、高齢者、有合併症者への治療指針が求められる。寛解達成者の出口戦略や予防の概念について考えることも必要である。
【講演6】「慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する気管支鏡的治療」
座長:神奈川県内科医学会 神奈川呼吸器疾患対策委員会委員 新井理之 先生
演者:聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科教授 峯下昌道 先生
 近年増加傾向のCOPDの外科治療としては、肺移植や肺容量減少術などがあるが、大きな侵襲を伴う点が問題である。肺炎罹患後に偶発的に肺容量が減少し、呼吸状態の改善をみる症例を経験したことから、同様のことを気管支内視鏡を用いて行うことができるのではないかと考えた。すなわち気管支内視鏡的肺容量減量術であり、肺気腫型COPDが適応となる。血流シンチにより、血流の乏しい部位を標的とする。
 2つの手技を紹介する。ひとつめはendobronchial one-way valveを用いるもので、葉間胸膜がしっかりしている症例が適応となる。標的とする部位への気管支内に、一方向だけ通気する弁を気管支鏡で留置し、その末梢の肺を虚脱させるものである。ふたつめは形状記憶コイルを用いるもので、肺の過膨張を伴う症例が適応となる。肺の組織が少ないものは適さない。直線的な形にした金属を標的部位の気管支に気管支鏡を用いて挿入すると、金属がもとのコイル状の形状に復元するにつれて、周りの肺組織を巻き込んでいく仕掛けである。

 最後に聖マリアンナ医科大学 呼吸器内科教授、聖マリアンナ医科大学病院副院長 峯下昌道先生より閉会の辞を頂いたのち、別室にて情報交換会が持たれ、和やかな雰囲気のうちに終了いたしました。

【平成30年新春学術講演会予告】
 平成30年1月18日(木)19時より横浜駅西口の横浜ベイシェラトンホテル&タワーズにて、神奈川県内科医学会平成30年新春学術講演会が開催される予定です。担当は高血圧・腎疾患対策委員会と糖尿病対策委員会で、講演1「生活習慣病治療における配合薬の意義~高血圧・糖尿病を中心に~」を神奈川県内科医学会会長 宮川政昭先生に、また講演2「日本人の高血圧の成因と最適治療法の研究」を日本臨床内科医会会長 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科名誉教授 猿田享男先生にご講演いただく予定です。

【第81回集談会予告】
 例年2月に開催される集談会は、平成30年に限っては、9月に行われる第32回日本臨床内科医学会に統合されるため開催はありません。第81回集談会は平成31年2月に第1地区横浜内科学会の担当で開催予定です。

【平成30年度定時総会予告】
 平成30年5月26日(土)に神奈川県総合医療会館会館にて平成30年度定時総会が開催される予定です。平成30年に限っては、9月に行われる第32回日本臨床内科医学会に力を集中するため、議事と表彰のみで、学術講演会の開催はありません。

【第32回日本臨床内科医学会予告】
 平成30年9月16日(日)と17日(月祝)にパシフィコ横浜にて第32回日本臨床内科医学会が当会主催で開催予定です。詳細はウェブサイトhttp://kanagawamed.org/jpa32/を参照ください。

【おわりに】
 平成27年度から神奈川県内科医学会は宮川政昭新会長の下に新体制となり、それまでの「学術Ⅰ部会」と「総務部会」が合流して「総務企画部会」となって早2年以上となりました。2期めを迎えても今までの長い歴史のある講演会に新たな変更や発展を加えながら、4つの基本講演会を開催していきたいと思います。また神奈川県内科医学会が主管する第32回日本臨床内科医学会(平成30年9月)のための開催準備組織委員会も回を重ねるたびに、学会のより具体的な計画が着々と形成されています。この大きなイベントを成功させるためには、全会員のご支援・ご協力が不可欠です。今後とも、神奈川県内科医学会の講演会開催に、ご協力とご参加をお願い申し上げます。

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