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2016年9月11日日曜日

日臨内ニュース 万華鏡「見ているのか、見せられているのか」外山 学

日臨内ニュース 万華鏡「見ているのか、見せられているのか」外山 

 国が、国民への「見える化」を強力に進めている。昨年4月「地域経済分析システム(RESAS:リーサス)」が、 内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)から提供開始された<#1>。トップ画面は、打ち上げ花火が次々に映し出される華々しいもので、数回の追加リリースを経て、現行版は今年3月の第II期3次リリースである。当初の目的は、地方自治体の地方創生取り組みへの支援であったが、公開情報も多く、「産業」「地域経済循環」「農林水産業」「観光」「人口」「消費」「自治体比較」の項目立てて、各種ビッグデータをグラフや花火図などで可視化できる。
 地方自治体による活用事例の取りまとめや、地方創生の運動論(ムーブメント)を国民レベルで盛り上げていくため、自らの地域を分析し地域を元気にする政策アイデアを国民から募集する「地方創生☆政策アイデアコンテスト」の情報も掲載されている。ちなみに同コンテスト「2016」の募集期間は、10/111/13である。
 「見える化」は社会保障分野でも積極的に取り入れられており、済財政諮問会議が昨年12月に策定した「経済・財政再生アクション・プログラム」においても、“躍動感ある改革推進”の柱として“改革の推進力”“人々の気付きと行動変化の鍵”“見えるから分かる、変えていくへ”と表現され、1)関係主体・地域間の比較による差異、2)行政の運営改善や成果の有無・程度、3)改革への課題の所在ーの“3つの分かる”が謳われている。
 4月には「経済・財政と暮らしの指標『見える化』ポータルサイト」が開設された(7月に掲載情報追加)<#2>。「地方財政」「社会保障」「社会基盤」「文教」「暮らしの指標」「人口指標、経済指標」の各分野について、都道府県、市町村間の比較が可能である。社会保障分野には、医療費をはじめ26の項目が掲載されている。市区町村の1人当たり医療費の地域差などについて、色分けされた日本地図とコメントを見ることもできる。
 また7月には、市区町村別に在宅医療に関する公開可能な統計情報を整理した「在宅医療にかかる地域別データ集」が公開された<#3>。厚生労働省の「全国在宅医療会議」の第1回会合では、この中から“医療資源の状況(在宅療養支援診療所の届出数)と自宅死の割合の関係”に着目している。しかし、全国の自宅死亡のうち、自殺と不慮の事故死を合わせると18.1%に達し(2014年の統計)、また65歳以上の自宅死において、孤独死(発見まで2日以上経過)が17.8%を占めるという推計があり、さらに東京23区内に限れば孤独死が35%を占めるとの指摘もある。これら要素の影響度を考えると、自宅死イコールいわゆる在宅看取りとは言いがたく、数%の差異をストレートに在宅医療の充実度と結びつけるには無理があろう。オモテに並んで“見えやすい”ものは、ひょっとすると“見せたい”もの、かもしれない。
                   (記 外山 学)
参考資料
#1)https://resas.go.jp/
#2)http://www5.cao.go.jp/keizai-shimon/kaigi/special/reform/mieruka/

#3)http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html

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