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2016年3月27日日曜日

神奈川県内科医学会 新春学術講演会 2016.01.21

神奈川県内科医学会 新春学術講演会 2016.01.21

1.「高齢者の命を脅かすCOPDと肺炎~その予防戦略~」横浜市立大学医学部呼吸器内科教授 金子猛先生
 慢性閉塞性肺疾患(COPD)の認知度は低く、国民の30%しか名前を知らない一方、COPDによる死亡は増加の一途をたどっている。40歳以上の成人のうち530万人以上が罹患していると考えられるが、そのほとんどは診断されていない。煙草の煙などの汚れた空気を吸引し続けることによっておこる肺の慢性炎症性疾患であり、主に末梢気道に病変が存在するため、CT画像では変化を見つけにくく、酸素飽和度もあまり低下しない。スパイロメトリーは早期から異常となり診断に有用である。COPDの治療では日本呼吸器学会のガイドラインにあるとおり、長時間作用性抗コリン薬(LAMA)と長時間作用性β2刺激薬(LABA)の吸入を主体に用い、喘息合併COPD例には吸入ステロイド(ICS)も加えるとよい。
 肺炎は国内死亡原因疾患の第3位であり、その95%以上を高齢者が占める。市中肺炎の40%は肺炎球菌が原因菌であり、国により定期接種化された多糖体ワクチン(PPV23)の接種により、肺炎球菌性肺炎の60%減、すべての肺炎の40%減が期待される。しかしPPV23はブースター効果がかからず、2年ほどで接種前のレベルに抗体価が低下しているため、これだけで肺炎予防は難しい。そこでブースター効果に優れた結合型ワクチン(PCV13)を希望者においては併用することが望ましい。PCV13を接種後6~12ヶ月後にPPV23を接種すると良好な効果が得られるという。

2.「禁煙の動機づけ面接法」新中川病院内科・神経科 加濃正人先生
 人はつい今までと変わらない行動を選択しがちである。動機づけ面接法(motivational interviewing:MI)とはミラーとロルニックにより開発された対人援助理論である。受容的応答を旨とする「来談者中心的要素」と特定の変化に指向させる「目的志向的要素」を併せ持った面接のスタイルであり、この2つの要素をミックスさせると行動変容が起きやすいと考えられている。MIは禁煙外来のみならず、アルコール・薬物・ギャンブル依存やダイエット・運動・摂食障害やDV・家族関係などにも有効な手法である。MIを実際に行うにあたり「OARS」を繰り返しながら進めていくとよい。すなわち、開かれた質問(Open question):「はい」「いいえ」で答えられない質問。是認(Affirming):相手の強みや努力に言及する。聞き返し(Reflecting):相手の言葉をそのまま、または治療者の理解した内容で返す。要約(Summarizing):相手の言動や考えを、箇条書きのように並べていく。聞き返しには、言葉を明確化するための「単純な聞き返し」と、意味や感情を明確化するための「複雑な聞き返し」がある。これら単純と複雑の聞き返しを繰り返しながら状況を明確化していくのだが、相手の考えの正確な理解のためにはあえて「空気を読まない」ことも大事である。要約の段階では、それまでに相手が語った言葉や、聞き返しによって合意に達した言葉を箇条書きのように列挙して聞き返すことによって、複雑な問題を概観して明確化すると同時に堂々巡りや脱線の防止をすることができる。
 講演中に、前の講演者の金子猛教授を模擬患者として迎え、診察室でのMIの実際をリアルにご披露いただき、MIへの理解が深まったと感じた。神奈川県内科医学会の「今日からできるミニマム禁煙医療」の第2巻「禁煙の動機づけ面接法」を勉強して、ぜひ明日からの診療に役立てたいと思った。

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