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2016年10月26日水曜日

日本臨床内科医学会 教育講演3「褥瘡のラップ療法」 宮城県大崎市民病院鹿島台分院内科診療部長 鳥谷部 俊一 先生 2016.10.9

日本臨床内科医学会 教育講演3「褥瘡のラップ療法」
宮城県大崎市民病院鹿島台分院内科診療部長 鳥谷部 俊一 先生

 演者が1996年に創案した「ラップ療法」とは、安価な食品用ラップフィルムや紙おむつなどの日用品を貼付する褥瘡の処置法である。医療資源の乏しい海外の国や、高齢社会となり褥瘡人口の増えている我が国の医療経済にも有益と考えられる。ラップ療法は単なる創傷被覆材の安価な代替というだけでなく、従来の処置に優るとも劣らない褥瘡治癒効果を実現している。通常の厚みのある創傷被覆材は圧力やズレ力により創に物理的損傷を与えるが、薄く柔らかいラップではそれがないため治癒が早まると考えられる。透明なので創の状態観察が容易という利点もある。
 ラップ療法の実際は①患部を毎日洗浄し、周辺にワセリンを薄く塗り、患部全体を十分に覆う大きさの穴あきフィルムを貼る。絆創膏は使わない。②浸出液はケアシートや紙おむつをあてて吸収させる。浸出液が多ければ一日数回処置する。③創を毎日観察し感染兆候を見逃さない。創感染は治癒を妨げる外用抗菌剤を使わず抗生剤を全身投与する。壊死組織は適切に除去する。
 ラップ療法は有効性の高い創処置なので、褥瘡予防・治療の基本である栄養・体圧分散ケアを簡便化できる。ラップ療法の原理を応用した滅菌医療材料「モイスキンパッド(白十字)」が入手可能となっている。

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