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2017年3月22日水曜日

神奈川県内科医学会新春学術講演会2017.1.19「医薬品で健康を害うことのない世界をつくるために」

「医薬品で健康を害うことのない世界をつくるために」
{薬害の歴史に学ぶ}川崎北合同法律事務所弁護士 湯山 薫 先生
 医薬品による健康被害のうち、行政や企業の不適切な行為が関与したことにより、社会問題化したものを「薬害」という。
①サリドマイド事件:鎮静・睡眠薬として1950年代末~1960年代初め販売され、その催奇形性により手足や耳などに障害を持った被害児が生まれた。②スモン事件:1960年代後半、整腸剤キノホルムにより死亡、失明、歩行障害、自律神経失調を伴う亜急性脊髄視神経症(subacute myelo-optico-neuropathy:SMON)を引き起こした。③クロロキン事件:日本のみクロロキンの適応拡大による長期投与が行われ、1962年以降失明も含む網膜症が増加した。④薬害エイズ事件:1980年代に非加熱血液凝固因子製剤により、主に血友病患者に多数HIVを感染させた。⑤MMR(新三種混合)ワクチン事件:1989年導入のMMRワクチンにより無菌性髄膜炎などの被害が発生し後遺症を残した。⑥薬害肝炎事件:多数の人の血液を集めた、ウイルス混入リスクの高いプール血漿を用い、充分なウイルス不活化処理もなされなかったフィブリノゲン製剤や血液凝固第Ⅸ因子製剤により多数のC型肝炎ウイルス感染者を発生させた。
{薬害被害の体験}薬害C型肝炎被害者 浅倉美津子 様
 1988年次男を出産した際、出血が多かった。退院後倦怠感と発熱あり、内科に入院しC型慢性肝炎と診断されたが感染源は不明とされた。2002年東京と大阪で薬害肝炎訴訟が起こされたことを知り、カルテ開示により出産時にフィブリノゲン製剤を投与されていたことが判明した。勤務先から解雇されるのではないかと不安な日々を過ごしたが、2008年に薬害肝炎救済法が成立した後、勤務先を退職してつらいインターフェロン治療を受けた。幸い完治することができたが、現在も6か月毎に超音波検査や採血フォローアップを受けている。
{薬害事件の背景と対策}清和総合法律事務所弁護士 服部功志 先生
 薬害が起こる制度的問題として、①承認審査:安易な適応の拡大、危険性情報の過小評価、②市販後安全対策:正確な副作用情報が上がってこないため、厚労省の対応の遅れがあり、因果関係が明らかになる前に被害が拡大する。③利益相反問題:厚労省からメーカーへの天下り、などが挙げられる。外国にならい日本でも患者からの直接の被害情報が求められる。薬害の予防原則は「重大かつ不可逆的な被害が起こりうるときは、危ないと思った段階ですぐに手を打つ」ことである。
 薬害被害者の求めるものは、①薬害教育の充実、②薬害研究資料館の創設、③患者からの副作用報告制度の創設、④第三者監視組織の創設、である。
 医師に求められるものは、①最新の副作用情報の収集、②学会における最新知見の共有、③予防原則に立った副作用情報の収集(患者の話を注意深く聴く)④PMDAへの速やかな副作用報告、⑤適応外使用に対する慎重な姿勢、である。

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