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2016年1月25日月曜日

港南医学会2016.2.20「新時代を迎えたウイルス肝炎治療」

我が国では毎年約3万人が肝細胞癌(HCC)で死亡しており、その約60%はC型肝炎ウイルス(HCV)による慢性肝炎・肝硬変によるものである。HCV感染者は国内に150から200万人いると推定される。HCV1型は2型に較べ難治であり、我が国では1型が約70%を占める。1992年にインターフェロン(IFN)単独療法が始まったが、当初1型高ウイルス症例のウイルス排除(SVR)率は5%に達しなかった。2004年にPeg-IFNとリバビリン(RBV)併用療法によりSVR率は1型50%、2型80%超に向上し、2011年よりPeg-IFNとRBVとdirect acting antivirals(DAAs)の3剤併用療法により80%超、2014年よりDAAs2剤のみの治療により、現在1型2型ともに100%に近いSVR率を達成できるようになった。現在の標準治療は1型にはSofosbuvir (SOF)とLedipasvir (LDV)併用、2型にはSOFとRBV併用12週間である。高額の薬剤費が問題だが、肝炎治療助成制度により負担軽減が可能である。肝臓病非専門の医師にぜひ知って欲しい点として、まずHCV感染を知らない多くの潜在患者を拾い上げ、またHCV感染を知りながら治療していない患者を手遅れにならないうちに最新の治療に導入することである。ただし現在HCCに罹患中の患者や非代償性肝硬変患者は治療の適応がまだなく、2型で腎不全や透析中の患者に使えるDAAs療法は未確立である。DAAsによる治療の前にはDAAsへの耐性ウイルスの有無を調べることが重要である。なぜならDAAsによる治療に失敗した場合、強い耐性ウイルスができ、その後の治療は極めて困難となるからである。併用禁忌薬の中には日常診療で使われる薬剤も含まれるので注意が必要である。治療の途中でDAAsの内服を中断すると耐性ウイルスができやすく、併用禁忌だからといって安易にDAAsを休薬させてはならない。新しいDAAs治療により、高齢かつ肝線維化の進んだ患者のSVR達成例が格段に増えるであろうが、このような患者でのSVR後肝発癌が減少するか否かはいまだ未知数である。治療後の経過観察を怠らないことが重要と考える。

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