テーマ「C型肝炎撲滅を目指して」
「日本における肝炎対策の現状と今後」について厚生労働省健康局がん・疾病対策課肝炎対策推進室の磯田広史肝炎対策専門官の講演を拝聴した。我が国の肝炎ウイルスの持続感染者数はB型で110~140万人、C型で190~230万人と推定され、未治療のまま放置すると、肝硬変や肝がんといった重篤な疾病へ進行する危険性があるため、感染者を早期に発見し、早期に適切な医療を実施することが重要である。厚生労働省は肝炎対策基本法や肝炎対策基本指針を踏まえ、抗ウイルス治療への医療費助成や肝炎患者の重症化予防対策、B型肝炎に対する創薬をはじめとする肝炎研究などの肝炎総合対策を推進している。対策の実施においては国や地方公共団体のみならず、あらゆる関係者の連携が必要で、第一線で臨床に携わる先生方にも、施策も含めた肝炎に関する正しい情報を知り、国や地方公共団体の肝炎対策の推進と良質な肝炎医療の提供にご協力頂きたい。平成28年度には肝炎対策の現状と課題を整理し、肝炎対策基本指針の改正と肝炎研究10ケ年戦略の中間見直しを行った。根本的な治療薬が存在しないB型肝炎に対する創薬実用化研究に注力したい。また肝炎検査の受診率の向上、特に職域における肝炎ウイルス検査の促進も重要である。50人未満の会社での健診で肝障害を指摘されて肝炎ウイルス検査を受けた人は13.6%に過ぎないというのは驚きである。芸能人を起用した「知って、肝炎プロジェクト」啓発活動も進めている。
引き続き「C型肝炎治療と経過観察の新たな戦略」について国家公務員共済組合連合会新小倉病院の野村秀幸副院長の講演を拝聴した。第2次世界大戦を契機に世界中に蔓延したC型肝炎の日本における患者数は、2011年の推計で120万人(人口の約1%)と言われている。現在通院中の患者は50万人(治療による治癒患者25万人を含む)、感染を知りながら継続受診していない患者は25万人から70万人、感染を知らない潜在HCV感染者は20万人から35万人と推定される。現在は症状がなく特に困っていないので、治療を受けていない患者も多い。また医師から「通院しなくてよい」、「経過観察でよい」と言われ、そのまま通院していない患者も少なくない。最近の研究ではALT(GPT)が正常範囲内であっても、慢性C型肝炎患者の65%に軽度の肝線維化がみられたという。漫然とした患者の抱え込みは、取り返しのつかない結果となる恐れがある。最近のC型肝炎治療は劇的な進歩を遂げた。2014年からC型肝炎に対するインターフェロンを使用しない経口剤のみの24週間治療が開始され、2015年からは世界標準の12週間の経口剤のみの治療も始まり、96%以上の患者が重篤な副作用もなく治癒するようになった。現在では高齢者にも、一部の肝硬変患者にも積極的に行われている。高額な治療費については公費助成制度を利用すると月額1~2万円で治療を受けることができる。治療初期からウイルス量は激減し、肝機能も正常化する。再燃患者はごく少数で、ほとんどの患者が治癒する。自覚症状としての全身倦怠感や食欲不振も治療中から改善し、治療後ほとんどの患者のQOLも向上して元気になってくるのは驚きである。ウイルスの消失に伴い肝発癌リスクの低下が期待されるが、ゼロになるわけではなく、特に高齢者、男性、肝線維化進展例、脂肪肝や糖尿病のある患者に対しては、治療後も注意深いフォローアップを続けることが必要である。
2017年4月18日火曜日
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