「地域の医療提供体制の現状と将来~とくに神奈川県について~」
国際医療福祉大学医療福祉学部学部長 高橋 泰 先生
日本全体で、0~64才の人口は年100万人ずつ減少し、65才以上の人口は年50万人ずつ増加していく。その結果、2050年には日本の高齢化率は39.6%に達する見込みである。神奈川県は、過去の地方からの人の流入により、若い人が多かったが、今後一斉に高齢者が増加するであろう。全国的にみると神奈川県は医療密度は低い方だが、高齢者施設はトップクラスの多さである。しかし、今後の高齢者の増加に施設数が追いつかない恐れがある。日本の人口減少のため、今後の医療需要は次第に減って行く。
今後、日本人の意識の変容がおこり、一人当たりの医療・介護を減らす省エネ型の老い方・死に方を希望する人が増えてくるだろう。現にフランスで寝たきりの高齢者が少ないのは、食事が摂れず動けなくなったら、おむつ替え・食事介助を諦めてしまう結果、寝たきりの状態で生きている期間が短くなるためである。伝統的な日本人の精神風土にあっては、このような考え方に強い抵抗感があることは確かだが、フランスでの変化も比較的最近になってからなので、日本でも思ったより短期間に変わっていくかもしれない。そんな社会を迎える前に、高齢者一人一人が「どこまで生きたいか」という自分の意思をはっきり持つことが必要ではないだろうか。
2016年5月30日月曜日
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