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2015年6月26日金曜日

編集後記「これだけは知っておきたいC型肝炎・B型肝炎の知識」平成27年度改訂版

 肝臓がんは、我が国のがん死亡において肺、胃、大腸に続いて第4位の位置にあります。肝臓がんの原因の70%を占めるC型慢性肝炎の治療は近年飛躍的な進歩を遂げており、Direct acting antivirals(DAAs)である第1世代プロテアーゼ阻害薬を加えた3剤治療が2011年に導入され70%の持続的ウイルス排除を、2013年には第2世代プロテアーゼ阻害薬を加えた3剤療法により90%の持続的ウイルス排除を可能としています。そして2014年にはインターフェロンなしの経口2剤による治療も始まり、2015年にはさらに新しい治療薬の登場が予定されています。持続的ウイルス排除は限りなく100%に近づくとともに、経口2剤療法においてはインターフェロン特有の副作用もなく、代償性肝硬変患者にも治療の可能性が広がってきています。
 我が国における慢性C型肝炎患者の高齢化は非常に進んでおり、65歳を超えると発がんリスクが高まるため、速やかに適切な治療を行うことが求められています。経口2剤療法は年齢・性別や肝臓の線維化による治療効果への影響がきわめて少なく、今まで治療の適応がないと考えられていた症例にも治療の扉が開かれたという点で画期的といえます。
 治療の進歩の一方で、自分の慢性肝炎に気づいていない人や慢性肝炎に気づきながらも治療に踏み出せない多くの人が存在することがとても残念です。無料で行える肝炎ウイルス検査などを利用して、より多くの慢性肝炎患者を速やかに治療に導くことが重要です。自治体による肝炎治療への医療費助成制度も大きな助けとなることでしょう。
 急速に進歩する肝炎治療の新情報をすばやく、わかりやすく、より多くの治療者にお伝えするための当委員会独自の視点を盛り込んだ小冊子である「これだけは知っておきたいC型肝炎・B型肝炎の知識」の平成27年度改訂版をお届けします。当委員会の委員による分担執筆によって、今回で第3回目の改訂となります。実際の診療に役立つ内容とするため、医学的な内容に加えて、保険請求上の注意点や肝炎治療の医療費助成制度などの情報も載せているため、特徴ある冊子になっていると思います。肝臓病の専門・非専門にかかわらず、是非すべての章に目を通していただいて、明日からの肝炎診療にお役立ていただけることを強く願っています。

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