新委員長挨拶 岡 正直
このたび肝炎対策委員長に就任いたしました。前々委員長の多羅尾先生、前委員長の宮本先生のご尽力により当会の活動は着実に充実してまいりました。私の学術Ⅰ部会長との兼務のため十分な仕事ができないことを危惧しておりましたが、同時に永井一毅先生の副委員長ご就任によりお力をいただきまして、今後多くの皆様のお助けを頂戴しながら職務を遂行してまいりたいと存じます。会の活動内容については別項「事業委員会報告」を参照ください。
さて、わが国のがん死亡第4位の肝臓がんの原因の70%を占めるC型肝炎の治療は、近年飛躍的な進歩を遂げ、最新のインターフェロン療法で90%、2014年秋に登場の経口剤のみの療法で85%の治癒率を達成し、さらに2015年以降次々と新薬の発売が予定されています。一方、肝炎患者の高齢化は非常に進んでおり、65歳を超えると発がんリスクが高まるため、治療に手をこまねいている時間はほとんどありません。激変する肝炎治療の新情報をすばやく、わかりやすく、より多くの治療者にお伝えするための、当委員会独自の視点を盛り込んだ講演会や小冊子をタイムリーに企画していきたいと考えております。
肝炎治療の進歩にもかかわらず、多くの潜在する肝炎患者が治療者のもとに届いていない現実があります。わが国においておよそC型で100万人超、B型で90万人もの自らの感染に気づいていない人がいるといわれております。自治体で行われている肝炎ウイルス検診の受診率も26.2%と低迷し、肝炎ウイルス陽性の結果を知った人であっても病院を受診する人は66.2%に留まっているとのデータにとても残念な思いがいたします。世間一般では「肝臓病はお酒の飲みすぎ」との認識が支配的で、慢性ウイルス性肝炎に対しても自覚症状乏しく、「痛くない、辛くない」病気で、また一昔前の「治らない」病気という思い込みから、致命的な末期状態まで放置されがちです。肝炎治療の進歩を背景に、うかつに医療機関に他疾患で通院中の肝炎患者を看過していると、今後医事紛争に巻き込まれる事態も想定されます。このような潜在する肝炎患者の掘り起こしのため、当委員会では永井副委員長を中心に、横浜地区で肝臓病を専門としない先生でもすぐに実践可能なできる限り簡便な病診連携ガイドを作成し普及させる取り組みを始めています。また、一般人への啓発のため、市民団体と連携しながら、市民公開講座なども企画していきたいと考えています。
着実な治療の進歩があるB型肝炎ですが、いまだ多くの診療上の困難が残されています。今後急増が確実とみられる非アルコール性脂肪肝炎(NASH)とNASH肝がんへの対策もゆるがせにできない大きな課題です。これらについても継続的にしっかり対応していきたいと思います。
今後とも肝炎対策委員会の活動にご支援をいただきたく、よろしくお願い申し上げます。
0 件のコメント:
コメントを投稿