【第40回臨床医学研修講座報告】
第40回臨床医学研修講座は、平成27年10月31日(土)午後3時~6時、平塚プレジール6階「大山」にて第4地区藤沢市・茅ヶ崎・平塚市・中郡・小田原・足柄上・秦野伊勢原の各内科医会の協力、東海大学医学部の主管にて開催されました。
東海大学医学部副学部長 高木敦司先生の司会の下、東海大学医学部医学部長 今井裕先生より開会の挨拶を、引き続き宮川政昭会長より挨拶をいただいた後、5つのご講演をお聞きしました。ご講演の内容を簡単に紹介いたします。
1.「気管支喘息診療の進歩」呼吸器内科教授 浅野浩一郎先生(座長 小林邦芳幹事)
吸入ステロイド薬治療の普及により喘息の救急外来受診、入院また喘息死も減少した。しかしコントロール困難な重症喘息患者への対応は残された大きな課題である。2014年に世界初の重症喘息国際ガイドラインが発表された。それによれば、重症喘息の診断には喘息専門医への相談が必要であり、重症喘息とされるものの中には様々な病態のものが含まれ、それぞれに適応した治療法の選択が強調されている。重症喘息患者に出会ったときは、まず吸入ステロイドの吸入手技とアドヒアランスのチェック、次に診断の再確認を行ったうえで、専門医に相談を行うことである。
2.「経口血糖降下薬の選択のポイント~併用薬の考え方からSGLT2阻害薬最新情報まで~」腎内分泌代謝内科准教授 豊田雅夫先生(座長 齋藤達也幹事)
近年、様々な新規経口血糖降下薬が登場し、2型糖尿病の治療成績が向上している。一方で選択の幅が広がることにより治療の組み立てが難しくなっていることも事実である。最近のトピックスとして「3Cの普及」を紹介したい。持続皮下インスリン注入ポンプ(CSII)、持続血糖モニター(CGM)、カーボカウント(Carb counting)である。適切な薬剤選択のためには、種々の検査値により病態を正確に把握することが重要である。心血管イベントを高率に引き起こす食後高血糖の改善も必要である。SGLT2阻害薬は腎臓での糖の再吸収に関わるSGLT2を阻害することでインスリンを介さずに血糖を下げる薬剤である。体重減少、血圧低下、尿酸低下、腎保護作用などが期待されるが、脱水に伴う副作用に注意が必要である。
3.「頭痛診療のマネジメント~診断から治療まで~」神経内科准教授 永田栄一郎先生(座長 古木隆元幹事)
頭痛に悩む患者は多いが、適切な治療が行われている例は少ない。日本頭痛学会の「慢性頭痛の診療ガイドライン2013」を参考に診断・治療を進めるとよい。頭痛は一次性(機能性)頭痛と二次性(器質的)頭痛に大きく分類される。二次性頭痛には生命に危険が及ぶものがあるため迅速な診断・治療が必要となる。一次性頭痛として片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛をあげ、診断と治療のポイントについてわかりやすく丁寧な説明があった。診断・治療に難渋する「薬剤の使用過多による頭痛」(薬物乱用頭痛)への対処法にもふれた。市販の頭痛薬にはカフェインが配合されているので乱用につながりやすいとのことである。
4.「血球数に異常を認めた際の診断・治療ステップ~最近の血液内科学の進歩をまじえて~」血液腫瘍内科教授 川田浩志先生(座長 鈴木哲幹事)
近年、血液病の治療は分子標的薬などの登場により様変わりし治療成績も向上している。1万超の白血球増加は喫煙が原因のことが多いが、1万5千超の場合は慢性骨髄性白血病などの疾患も疑う。白血球減少ではアフリカ系の人に見られる良性民族性好中球減少症というものもあるが、前白血病状態である骨髄異形成症候群に注意すること。多血症は脱水やストレス・喫煙も原因となるが、ヘモグロビン20以上では真性多血症を考える。小球性貧血なら鉄欠乏性貧血を疑う。フェリチンが正常ならば何らかの鉄の利用障害を、血清鉄もフェリチンも正常ならば血液疾患の精査を要する。また再生不良性貧血や多発性骨髄腫にもふれた。
5.「ホルター心電図を日常診療に生かす~心事故は予知できるか~」循環器内科教授 吉岡公一郎先生(座長 佐藤和義幹事)
我が国において心臓突然死は増加傾向にある。ハイリスク症例を予測するためにはホルター心電図は有力なツールとなる。技術の向上により小型化と高性能化が進んでいるが、当科では最新型の高分解能ホルター心電計を用いて心室遅延電位(LP)の連続記録を行い、致死性心室不整脈の予測に役立てるための検討を行っている。講演では豊富な自験例における解析の実際を提示しながら、リスク層別化の指標について詳細な説明があった。今後これらの指標が日常診療で簡便に使用でき、ハイリスク症例の予知の助けとなることが期待された。
いずれの講演も最新の研究内容を盛り込みつつも、明日からの診療にすぐに役立つ内容だったと思います。武田浩副会長の閉会の挨拶のあと、別室にて情報交換会が行われ盛会のうちに終了いたしました。
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