日本人間ドック検診協会(笹森典雄理事長)が、過去1年間に全国12ヵ所の大手健診機関で人間ドックを受診し、特定健診の方法に準拠した検査を受けた約5万3000人分のデータを分析した結果、血圧や中性脂肪、血糖などの検査数値について厚生労働省が特定健診の結果、医療機関を受診する目安として定めた「受診勧奨判定値」を一つでも超えた受診者の割合が49.7%、65歳以上の高齢者では54.6%だった。中高年の約半分を占める人数である。
これらの人々が医療機関を受診すれば、厚労省の意図する医療費の削減どころか、医療費の高騰につながる恐れがある。また医療スタッフの不足や過重労働が問題視されている情勢にあって、医師を含めた医療スタッフがこれらの人々に十分な時間をかけた保健指導ができるのだろうか?笹森理事長は「厚労省の定めた判断値を超えても一律に病院を勧めるのではなく、保健指導で生活習慣を変えるように促すことが大事」と話している。(読売新聞より)
国は2012年までに40〜70歳を対象にした特定検診実施率65%、特定保健指導実施率45%、メタボリックシンドローム該当者の減少率10%の幅で、後期高齢者医療制度への支援金を加算するペナルティを科す方針とのことである。
保険者によるペナルティの受け止め方に温度差があるかもしれないが、今まで以上にメタボ対象者に対する保健指導の圧力は高まるものと予想される。このことが人々の疾病予防という本来の目的につながれば良いのであるが、健診や保健指導を受けなかったり、保健指導の効果がない人に「健康自己責任論」のもとでペナルティが転嫁されるようなことがあってはなりないと思う。またメタボと同様以上に悪い影響を及ぼしている喫煙に対する取り組みが弱い印章がある点も気になる。禁煙の推進を特定検診、保健指導の中でさらに強く位置づけるとともに、タバコの値上げや職場や公共の場での喫煙の制限といった社会的整備を勧めることが重要であると考える。
【参考】厚生労働省「特定検診・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/shakaihosho/iryouseido01/info03d.html
(日臨内ニュース「万華鏡」2007年10月)
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